2003年10月8日、「3年契約」「全権委任」という条件が決め手で中日の監督に就任したという、落合博満(おちあい ひろみつ)さんは、招聘した全コーチに、選手に暴力を振るった際には即刻解雇する旨の誓約書にサインさせていたといいます。
「落合博満が中日の監督オファーを受けた経緯とは?」からの続き
チームを変えるのに3年はかかると思っていた
落合さんは、中日から監督要請があった際、当初、「2年契約でチームを改革してくれ」と依頼されていたところ、自ら「3年契約」という条件を提示し、中日の監督に就任したそうですが、
落合さんは、3年にこだわった理由を、自身のyoutube「落合博満のオレ流チャンネル」で、
チームを変えるのに何年かかると思う?オレ「絶対暴力はダメだよ」って言って、選手がそれをやっと分かったの5年かかってんだよ。
絶対やるもんだと思ってるもん。選手っていうのは。こうやって「やらない」って言ってるけども、絶対どっかであるはずだというふうに選手は思ってるさ。ましてや体育会系だから。
だから「暴力を振るった時点でその時点でユニホームを脱がせるからな」って言うことは全員(コーチ、球団スタッフも含め)には言ったけどね。
それでも、あ、ほんとにやらないんだっていうのに(本当に、この監督、コーチは暴力をやらないんだなと選手に自覚してもらうのに)5年かかってんだよ。あっ、本当にやってないんだっていう(のには時間がかかる)。
そりゃ、首脳陣変わったからってコロって変わるっていうことはありえないんだよ。昔の負の遺産っていうのはいっぱい残っているわけだから。こんな単純なことでもそれだけの年数がかかるんだよ。
(3年でも短いとの質問に)いやー、本当にそうだよ。そのかわり、次の代になりゃまたコロッと変わるけどね。だから、チームを立て直す時っていうのは、どうやってそれを支えるコーチ陣を揃えるかっていうのは一つの問題ではあるよな。
と、明かしています。
(落合さんは、たった120人くらいの所帯で、まさか5年もかかるとは思っていなかったそうです)
招聘した全コーチに選手に暴力を振るった場合は即刻解雇する旨の誓約書にサインさせていた
そんな落合さんは、監督就任直後、招聘した全コーチ一人一人に、「いかなる理由があっても選手に手を上げてはいけない。守れなかった場合は解雇する」という誓約書にサインさせたそうで、
投手コーチだった森繁和氏は、いざ契約という段階になった時、落合さんから、
このチームは監督やコーチの顔色や機嫌を見て動くようになっている。選手が上に怯えているようではいけないが、その習性が抜けきっていないチームだ。
首脳陣が舐められてしまうことは良くないが、指導者の顔色をうかがって動くような選手だけは育てないで欲しい。だから、手だけは上げないでくれ
と、言われたことを、自著「参謀」で綴っています。
また、一軍野手総合チーフコーチを務めた高代延博氏も、落合さんから、「絶対暴力はするな」「選手と絶対飯食うな(馴れ合いになるのを避けるため)」と言われたことを明かしています。
中日で鉄拳指導をしていた星野仙一を反面教師にし、暴力排除を掲げていた
というのも、中日は、1987~1991年、1996~2001年、監督を務めていた星野仙一さんによる鉄拳指導が常態化しており、現役時代、ロッテから中日に移籍した落合さんは、星野さんの激烈な鉄拳指導を目の当たりにしていたそうで、
もともと暴力が嫌いだった落合さんは、そんな星野野球を反面教師にし、初の監督業では、まず暴力排除を掲げたのだそうです。
体罰をなくすことは永遠の課題と語っていた
ちなみに、落合さんは、2023年10月6日、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」で、視聴者からの「スポーツ界から完全に体罰をなくすにはどうしたらよいでしょうか?」という質問に対し、
苦笑いを浮かべながら、
これはね、永遠になくならないと思います
と、語っています。
そして、2004年、中日の監督に就任した際、全コーチに「暴力をした時点でユニホームを脱がせる」という誓約書にサインさせたという、自身の経験を語りつつ、
上に立つものが、はっきり(体罰を)やったら、こういう処罰を受けるということを言えば、なくなる可能性はある。それを言わなければ、見て見ぬふりをされるということがあるのであれば、暴力は存在するんだろうと思います
体罰、イコール、言葉の暴力ということも含まれているんだろうし。人間には感情があって、その感情に任せて、暴言を吐いたり。言った本人は何とも思ってないんだろうけども、言われた本人がどういう受け取り方をするかによって、パワハラというのが存在すると思うので、それをなくすには、非常に難しい問題
(指導者だけではなく同僚にも言えることで)我(われ)関せず、というのが一番いいのかもしれないけど、指導者はそういうわけにはいかない。
だから感情を殺してまでもやるだけの人間が現れれば、なくなるということはあるでしょうけども、人間は感情の動物といわれるぐらい重要視されているので。だから、なくすにはどうしたらいいでしょうか、という質問というのは、色よい返事はなかなか出ませんね
お互いの相互関係がうまくいけば、同じようなことを言われてもパワハラだと受け止めないし。嫌な人から言われれば、優しい言葉でもパワハラだという受け止め方をするだろうし。なかなか難しい問題。
スポーツ界だけでなく一般社会にも言えることなんだろうけど、これをなくすというのは永遠の課題で、おそらく生涯なくなるということはないんだろうと思います
と、語っています。
「落合博満は監督就任後一番に森繁和にコーチをオファーしていた!」に続く