二枚目俳優として人気を博し、プライベートでも女優の十朱幸代さん、安奈淳さんと浮名を流した、竹脇無我(たけわき むが)さんですが、その後、あることがきっかけで「うつ病」を発症、長い闘病生活が始まります。
「竹脇無我の若い頃は?十朱幸代と?姿三四郎?父親が自殺!兄は失明!
からの続き
親友・松山英太郎の死で重度のうつ病に
こうして、度重なるスキャンダルにより、
人気が急落してしまった竹脇さんですが、
その一方で、自身の年齢が、お父さんの自殺した年齢(49歳)に近づくにつれて、
お父さんの自殺が脳裏から離れなくなり、それ以上生きることができるのかと、
不安に襲われるようになっていったそうで、
1991年に、「だいこんの花」シリーズで兄弟役を演じた、
親友の松山英太郎さんが「食道がん」で他界されると、
その悲しみは、さらに不安に拍車をかけ、
同年代の自分もいつそうなるか分からない
との思いとともに、ついには、
強い自殺衝動に襲われるようになります。
そして、その後は、その衝動をアルコールで紛らわせ、
だましだまし俳優の仕事をこなされていたのですが、
1996年には、とうとう抱えきれなくなって心療内科に行くと、
「うつ病」と診断され、そのまま入院。
すると、入院中は、抗うつ剤や睡眠剤が投与されたことで、
睡眠が確保され、次第に症状は回復。気分の落ち込みも、
少しずつ軽くなっていったため、半年後には退院されるのですが、
その後は、回復とうつ状態の繰り返し。
2000年には、またしても、
「糖尿病」と「うつ病」治療のため入院されたのでした。
(うつ状態のときは、自殺衝動をアルコールで抑えていたため、
テレビドラマや舞台にはなんとか立ち続けるも、次第に台詞が頭に入らなくなり、
最終的には、声をテープに吹き替えなければならないほど悪化したそうです)
森繁久彌
そんな竹脇さんは、闘病中、数多くの先輩や友人から、
温かい言葉をかけてもらったそうですが、
とりわけ、「だいこんの花」「おやじのヒゲ」両シリーズで、
親子役を演じた森繁久彌さんからもらった手紙には、
癒やされ、勇気づけられたそうです。
というのも、竹脇さんの亡くなった父・昌作さんと森繁さんは友人だったことから、
竹脇さんは、森繁さんをお父さんの姿とだぶらせて、本当のお父さんのように慕い、
森繁さんもまた、そんな竹脇さんを、実の息子のようにかわいがっていたそうで、
竹脇さんがうつ病で体調を崩し、演技ができない時でも、
森繁さんは、決して叱りつけることなく優しく見守ってくれ、
竹脇さんが、ある時、森繁さんを気遣う手紙を書かれると、
いつくしみ深きむがさまへ
待てば海路の日和 といいますが、長い間、待ちました。
まずはいいお手紙です。私も目がひらきました。
無我がくさってると、私も、だんだんくさります。
元気に生きましょう。私も、あと残りの少ないいのちです。
笑って、頑張りましょう。
ユダヤの格言の中に、
人間はないてばかりでは 生きられない、
また笑ってばかりでも 生きられぬ
と云うのがあります。
交互にやればいいでしょう。
太陽にだってそれがあります。
ましてや人間にだって。
三月十日久弥
という返事をすぐ返してくれたそうで、
竹脇さんは、この手紙を読み、
そうか、太陽が昇って沈むみたいに気分が変わっても、
それはそれでいいな。自分なりにやっていこう。
と、スーッと楽な気持ちになられたのだとか。
こうして、竹脇さんは、森繁さんをはじめとした多くの励ましのなか退院され、
さらに仕事を1年休養して、「うつ病」の治療に専念されると、
2003年には、ようやく完治。
うつ病との闘いをつづった著書「凄絶な生還、うつ病になってよかった」
を出版されると、芸能界にも復帰されたのでした。
ただ、2009年11月に森繁さんが96歳で他界されると、
斎場では、振り絞るように、
もう一度、会いてえ
と言って、人目をはばからず泣きじゃくり、
「うつ病」や「糖尿病」の治療のためにやめたお酒とタバコも、
再び口にするようになったそうなので、
竹脇さんにとって、森繁さんの存在が、
いかに大きかったかが伺えますね。
死因は?
それでも、竹脇さんは、その後、次第に立ち直られると、
「糖尿病」で患った「白内障」を手術するためにお酒をやめたり、
顔のシミを取られたりと、今度こそはと、
本格復帰に向けて準備を進められたのですが、
2011年8月21日未明、自宅で、
意識不明の状態で発見されると、病院に搬送されるも、
同日、内縁の女性と、前妻との間にできた2人の娘さんに看取られ、
「小脳出血」により、67歳で他界されたのでした。
さて、いかがでしたでしょうか。
思春期にお父さんを自殺で亡くすという、衝撃的な経験をされるも、
その後は、二枚目人気俳優となり、公私共に人生を謳歌されていた、
と思われた竹脇さんですが、
40代以降の姿を見ると、やはり、その衝撃は、
相当なものだったことが伺えます。
今はどうか安らかに眠ってほしいですね。
竹脇さんのご冥福をお祈りいたします。
(左から)森繁久彌さん、根本りつ子さん、竹脇さん。