清純派女優として人気を博すも、離婚後は、ヌード写真集を出版したことをきっかけに、ミステリアスで妖艶な悪女役を数多く演じられるようになった、鰐淵晴子(わにぶち はるこ)さん。そんな鰐淵さんの出演作品を、コメントと画像を交えてご紹介します。
「鰐淵晴子の若い頃は夫撮影でヌード写真?娘は?妹とは骨肉の争い?」からの続き
らしゃめん等で妖艶な悪女
鰐淵さんは、
青春映画を中心に出ていた私が、突然脱いだので、ファンの方にとってはかなりセンセーショナルだったと思います。でもあの作品が、大人の女優へ脱皮するきっかけの一つとなったのも事実です。
と、おっしゃっているのですが、
その通り、1972年、27歳の時には、江戸川乱歩の「陰獣」を原作とするNHKドラマ「夏の恋」で魔性のヒロイン・小山田静子役を演じ、その浮世離れした美貌で存在感を放つと、
以降、
1973年「反逆の報酬」
1976年「脱走遊戯」
1977年「House」
「らしゃめん」
など、数々の映画やテレビドラマで、妖艶な「悪女」役を熱演されています。
「らしゃめん」より。
ちなみに、鰐淵さんが、「らしゃめん」で外国人の現地妻(洋妾・らしゃめん)を演じられた際には、鰐淵さんの出演シーンはすべて夫のタッドさんが撮影を担当され、公私ともに順調と思われていましたが、お二人は1986年に離婚されています。
「悪魔が来りて笛を吹く」での妖艶なヒロイン
また、1978年、34歳の時には、横溝正史の同名小説を原作とする怪奇映画「悪魔が来りて笛を吹く」で、ヒロイン・椿秋子役に起用されると、その華麗でありながら妖艶な姿がたちまち大きな話題となります。
鰐淵さんの役どころはというと、元子爵の椿家に嫁いだ、少女のような若さを持つ40歳の女性・秋子役なのですが、実は、秋子には、実の兄である新宮利彦と関係を持ったばかりか、その子を産み落としてしまったという重大な秘密が・・・(このことが「悪魔が来たりて」の由来になっているそうです)
「悪魔が来りて笛を吹く」より。
鰐淵さんは、そんな秋子役を演じるにあたり、監督の斎藤光正さんから、楽屋で涙するくらい、毎日怒られてばかりいたそうですが、自身の演技のどこが悪いのかまったく分からなかったそうで、
ある日、追い込まれ、悩んで苦しんだ末にでてきた「秋子」が、監督は撮りたいんじゃないだろうかと気づき、
秋子は兄との近親相姦が精神面に作用して、いつも誰かに抱かれていたいと思う烈(はげ)しい女でした。相手が誰であれ埋められない「渇き」があったのだと思います。
演じてみて秋子の気持ちは、どこかわかる気がします。世の中には男と女しかいないのですし、男性にはない「魔性」という特権を女は持つことができる。ああいうミステリアスな部分を演じられて、私は幸せでしたよ。
秋子は事件が解決して、2階の窓から「いつか、こんな日が来るのを望んでいた」と言い残し、深い闇の底へ飛び降ります。秋子は常に、もともと自分は最初から存在していないのではないかという思いがあった。それが、あの落ちてゆくシーンに集約されたのだと思います。
私はその少し前に、ドラマ版の「八つ墓村」(78年、TBS系)で、事件の鍵を握る森美也子を演じました。金田一シリーズのファンの方には、森美也子も椿秋子もモンスター級に恐ろしいヒロインのようですが、そこに「美しくなければならない」という意識で演じられたのは、女優冥利に尽きました。
と、語っておられました。
出演作品(テレビドラマ、映画)
それでは、ここで、鰐淵さんの主な出演作品をご紹介しましょう。
テレビドラマでは、
1961~1962年「娘と私」
1965年「風と樹と空と」
「光る海」
1967年「続 風と樹と空と」
1972年「長谷川伸シリーズ『人斬り伊太郎』」 第9話
「風と樹と空と」より。工藤堅太郎さんと鰐淵さん。
1973年「木枯し紋次郎 第2シーズン『獣道に涙を棄てた』」 第8話
1974年「鏡の中の顔」
1975年「非情のライセンス第2シリーズ『兇悪のデザイン』」第63話
1977年「松本清張シリーズ・たずね人」
1978年「横溝正史シリーズII / 八つ墓村」
「横溝正史シリーズII / 八つ墓村」より。
1983年「母も娘も」
1985年「黒いドレスの女」
1991年「女優 夏木みどりシリーズ3」
1993年「愛と逃亡の果て・女優岡田嘉子」
1996年「真夏の薔薇」
「金田一少年の事件簿」
1997年「月の輝く夜だから」
1998年「太陽がいっぱい」
2000年「女同士」
2003年「夜逃げ屋本舗」
2004年「救急救命士・牧田さおり」
2005年「全国指名手配! 二つの顔を持つ女」
2006年「カクレカラクリ」
2007年「華麗なる一族」
「夕陽ヶ丘の探偵団」
2009年「ゴーストフレンズ」
2015年「新・牡丹と薔薇」
「新・牡丹と薔薇」より。
映画では、
1952年「母子鶴」
1955年「ノンちゃん雲に乗る」
1959年「乙女の祈り」
1960年「銀嶺の王者」
「伊豆の踊子」
「あんみつ姫の武者修行」
「母子鶴」より。
「ノンちゃん雲に乗る」より。
「伊豆の踊子」
1961年「猟銃」
1963年「丹下左膳」
1964年「二十一歳の父」
1967年「眠狂四郎無頼控 魔性の肌」
1973年「反逆の報酬」
1976年「脱走遊戯」
「反逆の報酬」より。(左から)渡哲也さん、鰐淵さん、石原裕次郎さん。
1977年「ハウス」
「らしゃめん」
1979年「悪魔が来りて笛を吹く」
1984年「愛しき日々よ」
1986年「南へ走れ、海の道を!」
1990年「ZIPANG」
「バカヤロー!3 へんな奴ら」
1992年「外科室」
1994年「我が人生最悪の時」
1995年「平成無責任一家 東京デラックス」
「遙かな時代の階段を」
「眠れる美女」
「バースデイプレゼント」
「外科室」より。南美江さん(左)と鰐淵さん(右)。
1997年「柘榴館」
「不機嫌な果実」
2002年「昭和歌謡大全集」
2004年「天国の本屋~恋火」
「貝ノ耳」
2005年「着信アリ2」
2006年「天使」
2006年「初恋」
ほか、数多くの作品に出演されており、1995年には、「平成無責任一家・東京デラックス」「遥かな時代の階段を」「眠れる美女」の3作品で、「毎日映画コンクール女優助演賞」を授賞されています。
また、2015年には、お昼のドラマ「新・牡丹と薔薇」で、2009年以来、実に6年ぶりにドラマに出演されると、コミカルな演技を披露。
鰐淵さんは、
でもね、この2月まで昼ドラ「新・牡丹と薔薇」(フジテレビ系)に久々に出演させてもらいまして。これまで私は、手の届かないムリ目な女性役が多かったのですが、このドラマで私が演じた母親役は三枚目キャラ。
初めての役柄だったので、演じていてすごく楽しかったですね。他のキャストの方から「鰐淵さんって、こんな役もやるんですね」と言われて、「私だって笑いの演技ができるのよ」と、ちょっと得意になっていました(笑)。
まさか、この年になって役者の幅が広がるとは想像もしていなかったので、嬉しい驚きでした。
と、70歳にして新しい境地を開かれています。
現在は?
さて、いかがでしたでしょうか。
清純派女優から、見事、妖艶な女優に転身された、鰐淵さん。
現在は、2匹の愛犬に囲まれて、穏やかな日々を過ごされているようで、
娘は大きくなってもう遊んでくれないけど、犬はいつでも甘えてくれますから。女優だって一人の人間ですから、皆さんと同じように苦しんだり悩んだりします。
でもやっぱり人生は楽しくないと。今でもこうやって取り上げてもらえるのは、ありがたいし、励みになりますね。
と、語っておられました。
これからも、時々は、お元気な姿を見せてほしいですね♪
「鰐淵晴子は天才ヴァイオリン少女だった?母は皇族ハプスブルク家!」