戦時中は、ハルビンで「満鉄(南満州鉄道)」の技師だったお父さんのもと、何不自由なく育った、宝田明(たからだ あきら)さんですが、日本が負け、終戦後は、様々な悲惨な体験をするほか、悲惨な光景も目の当たりにされたそうです。

「宝田明の少年時代は朝鮮/満州/ハルビンで軍国少年として過ごしていた!」からの続き

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終戦

自分たちを守ってくれるはずの関東軍がいなくなり、やがて、広島と長崎に原爆が落ちたことを知り、ハルビンもソ連軍から爆撃を受けたことで、大人たちが、薄々、日本が負けたことに気づき始める中、

ラジオからは、繰り返し、

在留邦人の皆様、15日に大切な放送がございますので、12時にラジオの前にお集まりください

という放送が流れるようになると、

ついに、8月15日、宝田さんは、両親と一緒に、ラジオの玉音放送(天皇陛下の肉声による放送)を聞き、戦争が終わったことを知ったそうです。

すると、両親は、畳の上にヘナヘナとへたり込み、歯を食いしばって涙を流していたそうで、

日本が戦争に負けるはずがないと信じていた宝田さんは、そんな両親に、

これ、嘘でしょう? 日本は負けてないでしょう?

と、何度も聞き返しながらも、

内臓をスポンとえぐり取られたような虚脱感というか、むなしい風穴が体の中に開いたような感覚でした。国家に洗脳されていた軍国少年でしたからね。

と、自分はこれからどうすればいいのか、分からなくなったそうです。

ソ連軍が満州ハルビンに侵攻

そして、8月22日には、ソ連兵10~15人ほどが乗った大きな85トン戦車40台ほどのソ連軍が、轟音をたてながら、ハルビン市内に乗り込んで来ると、

関東軍はあっという間に武装解除して、警官もいなくなり、さらには、ハルビンにあった特務機関の本部の人間もあっという間に逃げていなくなり、

翌日からは、学校が閉鎖されるほか、ハルビン病院や満鉄病院、医大などの医療機関も全部接収され、すべて閉鎖されてしまったそうです。

さらに、ソ連軍は、略奪と暴行、陵辱の限りを尽くしたそうで、宝田さん一家の住む社宅にも、ソ連兵の一兵卒が、「マンドリン」と呼ばれる自動小銃をぶら下げて入ってきたことがあったそうで、

それ以来、社宅の住人たちは、ソ連兵がどこの家に入るのか戦々恐々として、社宅のメインの玄関にかんぬきをかけ、缶カラを呼び鈴の代わりにし、カランカランと鳴らすように用心するようになったそうです。

「満鉄」の社宅は、13号(棟)あり、一棟が6世帯ずつ入る大きな3階建てで、治外法権のため、普段でも中国人は簡単に入ることができなかったそうです)

銃口を突きつけられる

それでも、その後、宝田さんは、幾度となく、今でも忘れられないひどい体験をされたそうで、

ある日の夕方のこと、宝田さんが食事をしているところに、(誰かがかんぬきをかけ忘れたのか)突然、ドアが開き、ソ連兵が2人入ってくると、そのうちの一人が宝田さんの後ろに立ち、宝田さんの頬に銃口を突きつけたそうで、

宝田さんは、恐ろしすぎて声も出ず、凍りついたようにじっとして歯を食いしばるも、極度の恐怖で歯の音だけがガタガタ鳴ったといいます。

(入ってきたソ連兵は、略奪してきたと思われる時計を左腕に10個ほどと、右腕に7、8個ほどつけ、電熱器やラジオなどをコードを丸めてぶら下げていたそうで、宝田さんの家にも強盗に押し入ったと思われますが、不幸中の幸いで、ご家族は全員無事だったようです)

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婦女暴行を目撃

また、ある日のこと、宝田さんが、社宅の2階から外を見ていると、向こうからソ連兵が二人歩いて来て、その反対からは、社宅に住む、ある奥さんが買い物袋をさげて一人で歩いて来るのが見えたそうで、

宝田さんは、

あ、捕まる、捕まる

と、思いながら見ていると、

案の定、その奥さんはソ連兵につかまり、

助けてくださーい

と、声を上げながら、宝田さんの住む棟の裏の崖に引きずられて行ったそうで、

宝田さんは、無我夢中で、かつて社宅の近くにあった交番に助けを求めて走っていくと、そこには、ソ連の憲兵がおり、

キャピタン パジャールスタ(将校さん、お願いです)!

と、言いながら、その憲兵を現場に引っ張って行ったそうですが、どうすることもできなかったそうです。

ちなみに、その奥さんは、その後、半年ほどして日本に帰ることになったそうですが、博多に上陸するまで錯乱状態で、とても無残な姿で日本に戻られたそうです。

(当時、社宅に住む女性たちは、ソ連兵から身を守るため、坊主にしてスカーフを巻き、5~6人で固まって、昼間に買い物に行くようにしていたそうですが、この女性はなぜか、1人で行動していたため、狙われてしまったのだそうです)

「宝田明の戦争体験が壮絶過ぎる!麻酔なしで手術も!」に続く

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