小津安二郎監督の生い立ちは？昔は学校の先生だった！

構図、色彩、台詞など、そのすべてが計算し尽くされた独特の映画スタイルから、黒澤明監督、溝口健二監督らと並んで最も国際的に支持されている、映画監督の小津安二郎（おづやすじろう）さん。今回は、そんな小津さんのルーツである、両親と生い立ちについて調べてみました。

年齢は？出身は？身長は？本名は？

小津さんは、１９０３年１２月１２日生まれ、
東京府東京市深川区（現在の東京都江東区深川）のご出身、

身長１７０センチ、

学歴は、
明治小学校附属明治幼稚園
⇒東京市立深川区明治尋常小学校（現在の江東区立明治小学校）
⇒松阪町立第二尋常小学校（現在の松阪市立第二小学校）編入
⇒三重県立第四中学校（現在の三重県立宇治山田高等学校）

ちなみに、「小津安二郎」は本名ですが、１９３０年の映画「お嬢さん」では、別名義「ヂェームス・槇」でギャグマン（ギャグの作者）もされています。

まずは、小津さんのお話の前に、今では想像もできない時代背景のため、小津さんのご両親のお話から。

小津さんのお父さん・寅之助さんは、三重県・松坂にある「土手新」と呼ばれる小津家の四男として生まれると、一旦、養子に出されるも、父・新七さんに呼び戻され、１４歳で上京。「土手新」の江戸店だった肥料問屋「湯浅屋」で働き始めます。

そして、寅之助さんは、１８歳の時、父・新七さんが引退したため、「湯浅屋」の番頭（分家の当主）になられます。

（寅之介さんは、海産物肥料問屋「小津商店」の番頭も任されて、掛け持ちされていました）

その後、寅之助さんは、「土手新」の当主・小津与右衛門さんの娘、きぬさんと結婚されるのですが、きぬさんが早くに病死したため、３２歳の時、９歳年下で、三重県・津の伊勢商人ご三家の一つだった中條家出身のあさゑさんと再婚されました。

（※現在の津市・松阪市・伊勢市は、廃藩置県前は「伊勢国」）

さて、小津さんは、そんな「伊勢商人」の両親の間に、東京で５人兄弟（兄・新一、妹・登貴、妹・登久、弟・信三）の次男として誕生すると、

小津さんが９歳の時には、お父さんの「子どもは郷里で育てたい」という意向で、小津一家は、お父さんの郷里・松坂に移り住み、小津さんは、松阪町立第二尋常小学校（現在の松阪市立第二小学校）に編入。

ちなみに、お母さんは教育熱心で、子どもたちには、勉強をかねて、お父さんへ手紙を書かせていたそうですが、小津さんはというと、小学校時代から、絵や作文で、リアルすぎる描写、観察眼、表現力、美術的センス、並外れた集中力など、すでに芸術家としての片鱗を見せていたそうです。

そんな小津さんは、その後、１９１６年に小学校を卒業し、中学校に進学すると、寄宿学校に入るのですが、この頃、初めて映画と出会うと、その影響を受けてか、「ベス単」「ブローニー」など、当時の最新カメラを使って撮影を始めます。（勉強やスポーツも励んでいたそうです）

ただ、やんちゃだったため、中学５年生（現在の中学３年生）の夏には、問題行動を起こして寄宿学校を追い出され、自宅から通学することになると、学校の目が届かないことを幸いに、小津さんはますます映画にのめり込んでいったそうです。

ちなみに、当時の小津さんの日記は、ほぼ映画日記といえるほど映画に関することで埋め尽くされており、名古屋の映画館や地元の神楽座に通って多くの映画を観ていたほか、ハリウッドの俳優にファンレターを出したり、後輩を集めて身振り手振りを交えて映画の話をするなど、映画一色の生活だったようです。

（特に１９１７年に公開されたアメリカ映画「シヴィリゼーション（英語版）」（監督トーマス・H・インス）がお気に入りだったそうです）

それでも、小津さんは、商業の道に進んでほしい両親の期待に応えるため、神戸高等商業学校（現在の神戸大学）を受験されるのですが、失敗。そして、翌年の１９２２年には、浪人して、三重師範学校（現在の三重大学教育学部）を受験されるも、これも失敗。

最終的には、両親の、「二浪するよりはまっとうな仕事についてほしい」との意向で、三重県飯南郡（現・松阪市飯高町）にある「宮前尋常高等小学校」（現存せず）に代用教員として赴任されるのですが、これも、映画への想いが捨てられず、１年で退職されたのでした。

ちなみに、小津さんの教員生活はたったの１年なのですが、教え子だった柳瀬才治さんは、

当時としては新しかったローマ字を教えてくれたり、マンドリンを弾いていたりして忘れられない先生だった。

と語っており、児童たちには強烈なインパクトを与えていたようです。