「女と味噌汁」「肝っ玉かあさん」など、数多くのホームドラマをプロデュースされてきた、石井ふく子(いしい ふくこ)さんですが、今回は、ホームドラマの金字塔と称される「ありがとう」について、ご紹介します。

「石井ふく子のデビューからのプロデュースドラマと演出舞台を画像で!」からの続き

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「ありがとう」の主人公は水前寺清子に即決

石井さんは、1970年~1975年まで、ホームドラマ「ありがとう」のプロデューサーを務められているのですが、

主人公を誰にしようか思案中だったある日のこと、偶然、テレビで歌手の水前寺清子さんが、大きな口を開けて元気に歌う姿を見て、

彼女しかいない!

と、一瞬にして魅了され、水前寺さんに即決されたのだそうです。

当初は超売れっ子の水前寺清子には接触できず

そこで、石井さんは、水前寺さんの所属するレコード会社に出演交渉をするのですが・・・

当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで超多忙だった水前寺さんが、拘束時間の長いテレビドラマに出演するのは無理だと、取り付く島もなく断られてしまいます。

それでもあきらめきれない石井さんは、それならば、直接本人にあたるしかないと、どうにかして、水前寺さんに接触を試みるのですが、

水前寺さんには、担当マネージャーが片時も離れずピッタリと一緒についていたため、水前寺さんが歌番組で訪れた「TBS」の局内でも、なかなか声をかけることができなかったのだそうです。

水前寺清子への口説き文句は「あなたは美人じゃない」?

そんな中、石井さんは、水前寺さんのマネージャーが男性であることを思い出し、女性用トイレの中で待ち伏せする作戦を思いつくと、

水前寺さんの歌番組の収録スケジュールを調べ、スタジオから一番近いトイレに目をつけ、物陰で水前寺さんが来るのを待つことに。

すると、本番が始まり、休憩時間になると、本当に水前寺さんがやって来たそうで、石井さんは、水前寺さんがトイレに入っていくのを確認してから、その後に続き、水前寺さんが個室から出てきたところを、

ドラマに出てくれないか

と、口説かれたのですが、

なんと、その口説き文句というのが、当時大スターだった水前寺さんに向かって、

あなたは美人じゃないところがいい

と、7回も連呼。

すると、水前寺さんは、

おもしろい方だな

と思われたそうで、

美人じゃなくていいなら気が楽だと思った

と、ドラマ出演を引き受けてくれたのだそうです。

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「ありがとう」が視聴率56.3%を記録する大ヒット

こうして、1970年4月、水前寺さんと山岡久乃さんが母娘役を演じたホームドラマ「ありがとう」の第1シリーズ「婦人警官編」(1970年4月~10月)が放送開始すると、このドラマは人気を博し、その後も、

第2シリーズ(看護婦編)(1972年1月~1973年1月)
第3シリーズ(魚屋編)(1973年4月~1974年4月)
第4シリーズ(カレー屋編)(1974年5月~1975年4月)

と、シリーズ化され、民放ドラマ史上最高の56.3%という視聴率を記録する大ヒット(いまだに民放ドラマの歴代最高視聴率を誇っています)。水前寺さんは、女優としても大ブレイクされたのでした。

ちなみに、水前寺さんは、歌手活動に専念するため、1973年、第3シリーズをもって降板されているのですが、

配役が大幅に変更された(京塚昌子さんと佐良直美さんが母娘役)第4シリーズは視聴率が大幅に下落し、結局、このドラマは第4シリーズで終了。石井さんの見る目がいかに素晴らしかったかが分かります。

「石井ふく子は橋田壽賀子の「愛と死をみつめて」を東芝に直談判していた!」に続く

「ありがとう」より。(左から)水前寺清子さん、石坂浩二さん、井上順さん。

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