一律した学校教育を嫌ったナンセンス作家のお父さん・中村正常さんの意向で、小学校へはほとんど行かなかったという、中村メイコ(なかむら めいこ)さんですが、そんなお父さんの子育ては、独特で、また、ユーモアに溢(あふ)れていたといいます。
幼少期は裕福な家庭で育つも独特の教育を受けていた
中村さんは、ナンセンス(ユーモア)作家のお父さん・中村正常さんと、元新劇の女優で作家のお母さん・チエコさんのもと、一人娘として誕生すると、白いテラスのある洋風の家で、何不自由なく育ったそうです。
また、幼い頃は、お母さんも働いていたことから、お裁縫の先生をしていたおばあちゃんに育てられたそうですが、
おばあちゃんからは、よく、
なるべく脚は投げ出してなさい。脚のきれいな女の子にならないと、これからの世の中はダメだから。ただ、正座をしなければいけないこともあるので、きちんと覚えなさいね
と、言われたそうで、
正座することが当たり前の当時において、独特の子育てをされていたそうです。
父親・中村正常からはいつもニコニコするように育てられていた
また、中村さんのお父さんは、英国紳士を気取り、お母さんにも娘である中村さんにもレディーファーストで、いつもオシャレで明るい人だったそうですが、子育てもユーモアが溢れていたそうです。
たとえば、中村さんが幼い頃、むずかると、いつも、
メイコ君、君に涙は似合いませんぞ。いつも笑っていなさい。
と、言っていたそうで、
そこで、ある時、中村さんが、
どうしてメイコはそんなにニコニコしてなきゃいけないの?
と、聞くと、
お父さんは、
うーん、そうだねえ。まあ、美人ならば、たまには涙も、ふくれっ面も良いものですが、どうも君はね。
と、困った顔で言ったそうで、
中村さんは、よく分からなかったため、
何なの?
と、聞くと、
お父さんは、
君ぐらいの器量の子は、いつもニコニコしているくらいでちょうどいいですぞ
と、言ったそうで、それでようやく、中村さんはお父さんの言っていることが理解できたのだそうです。
幼い頃から美人でないことを自覚していた
実際、中村さんは、幼い頃から、自分は顔が四角く八の字まゆ毛の変な顔だと、なんとなく自覚していたそうで、
(詩人のサトウハチロウさんからは、「アイスクリームのおさじみたいな顔」と言われこともあったそうです)
お父さんに言われて以来、いつもニコニコするようになり、ちょっとおもしろいことを言ってみたり、人の言うことを聞いて素直になろうと思っていたそうで、
中村さんは、
自分はけして美人ではない。この自覚は早めについてよかった。だからなるべく、泣かない、愚痴をこぼさない、しかめ面しない、これを自分に課してきました。課したからには、意識が自然にそちらに向くのか、無理なくできちゃうんです。
と、語っています。
ちなみに、中村さんは、当時、すでに子役として活動していたのですが、当時の映画女優はみな、本当にきれいな人たちばかりだったそうで、撮影所で会った入江たか子さんは、子供心にもその美しさに驚き、高峰秀子さん、若尾文子さんなども光り輝くように美しかったため、中村さんは、入江さんたちこそが本物の映画女優で、自分は「別枠」だと思っていたのだそうです。
(実際、若尾さんは、ご主人で建築家の黒川紀章さんから「君はバロックのようだ」と褒め称えられたと言われています)
「中村メイコが幼い頃は母親から家事一切の手伝いをさせられていた!」に続く
赤ちゃんの頃の中村さんとお父さんの中村正常さん。