青木一三スカウトの２つの殺し文句が決め手となり、契約金５０万円で、阪神（大阪）タイガースに入団した、吉田義男（よしだ よしお）さんは、入団後、最初の甲子園の一次キャンプでは、コーチとして参加していた、ノックの名手であり名指導者として名高かった岡田源三郎さんに守備を絶賛されたといいます。
「吉田義男が阪神(大阪)タイガース入団を決めた理由とは？」からの続き
阪神タイガース入団にあたり立命館大を1年で中退することを野球関係者から反対されていた
立命館大学１年の時、子供の時からファンだったという阪神（大阪）タイガースにスカウトされた吉田さんは、大学を中退して阪神に入ることになったそうですが、様々な問題が持ち上がっていたそうで、OBを交えた野球部関係者の議論は紛糾したそうです（太田嘉兵衛監督も吉田は手放せないと一度は反対したそうです）。
ただ、最終的には、吉田家の経済的事情を考慮して、気持ちよく送り出してくれたことから、吉田さんは、立命館大学に感謝しているそうで、時間がある限り、野球部OB会の児島敏夫会長の求めに応じ、野球部の手伝いをしているそうです。
甲子園の一次キャンプではノックの名手・岡田源三郎の凄まじいノックに必死に食らいついていた
こうして、１９５２年、阪神（大阪）タイガースに入団した吉田さんは、自主トレに参加した後、甲子園の一次キャンプに参加すると、松木謙治郎監督の明治大学時代の後輩にあたる岡田源三郎さんがコーチとして招かれていたそうですが、
岡田コーチは、戦前、プロ野球創世期に、「名古屋金鯱軍」の捕手兼監督としてならし、何よりもノックの名手として球界では知れ渡っていたそうで、
そのノックは凄まじく、狙ったところへ思い通りのスピードで打球を運ぶことができ、全力で追いかければぎりぎりで捕れる微妙なところへ狙いすまし、強弱をつけた打球を飛ばしたそうで、吉田さんは、このノックに必死に食らいついたのだそうです。
ノックの名手・岡田源三郎に守備を絶賛されていた
すると、そのプレーを見た岡田コーチは、
おい松木、新人の吉田だが、いまレギュラー遊撃手の白坂と比べて、一間（約１.８m）は守備範囲が違うな
と、松木監督に話しかけたそうで、
松木監督が、
そりゃ、当たり前でしょう
と、入団６年目で３０歳の白坂長栄さんのほうが上だと、頭から信じて答えると、
岡田コーチは、
それが逆なんだよ。吉田のほうが守備範囲が広いんだ。長い間、いろんな選手を見てきたが、あんなにうまい子は初めてだ
と、吉田さんを推したそうで、
ノックの名手であり、名指導者としても名高い岡田さんの最上級のお墨付きを得た吉田さんは、それからというもの、松木監督に注目してもらえるようになったのだそうです。
（当時のプロ野球には、現在のようにコーチ制度がまだ確立されておらず、 松木監督や助監督兼選手の藤村富美男さん、主将の金田正泰さんがコーチを兼任するような形だったそうで、手取り足取り教えてくれるわけではなく、見て覚える、自分で創意工夫しながら練習して体得する、ということがあくまでも基本だったそうですが、キャンプ中だけは、外部から特別コーチを招いて人手を増やし、選手を鍛えたのだそうです）
「吉田義男は阪神入団後は小柄な体を活かしたプレーを目指していた！」に続く
