１９９６年シーズン、好成績を収めながらも、新聞等の報道で、巨人が同じ１塁手の清原和博選手獲得に伴い、自身を解雇するつもりであることを知った、落合博満（おちあい ひろみつ）さんは、不快感を示し、その後、巨人が解雇を否定するも、巨人への批判を繰り返します。そして、最終的には、長嶋茂雄監督と直接対談の末、退団となります。
「落合博満は｢清原和博獲得のため巨人を解雇｣と報道されていた！」からの続き
清原和博は巨人の誘いに不快感を示し拒否していた
清原和博選手との交渉で、「一塁は空けておくよ。落合は解雇する方針だ」と伝えたという巨人球団幹部ですが、清原選手はというと、この申し出を受け入れなかったばかりか、逆に不快感を示したといいます。
というのも、巨人が、昔、ドラフトで裏切ったことについて謝罪がなかったこと、条件が２年契約で年俸３億円（西武での年俸は推定２億４０００万円でした）と最大級の評価ではなかったこと、そして、落合さんの放出を示唆する報道に、これでは自分が悪役にされると不安に思ったからだといいます。
（１９８５年秋のドラフト会議では、巨人の１位指名は清原選手で確実と思われていたのですが、当日、突然、PL学園のチームメイトの桑田真澄投手が１位指名されたことから、清原選手は涙ながらに（清原選手を１位指名し、交渉権を獲得していた）西武に行っており、巨人と清原選手との間には因縁があったのですが、１９９６年１１月１２日、清原選手のFA交渉が解禁となると、翌１３日、西武・東尾修監督は巨人の球団幹部に電話で「キヨは初恋の相手が忘れられないんだな」と巨人入りを示唆しています）
阪神が清原和博に猛アタックしていた
そんな中、阪神が清原選手に対して猛アタックを開始し、吉田義男監督は、巨人よりも１日早く、FA交渉解禁当日（１１月１２日）の朝に、清原選手の自宅に電話するほか、１１月１５日の入団交渉にも出馬し、「ユニホームの縦ジマを横ジマに変えてでもという気持ちや」と熱弁をふるったといいます。
（清原選手は、後に、自著で、阪神の条件は１０年契約で年俸は巨人の５倍、引退後は監督就任もあると超破格だったことを明かしています）
巨人・深谷球団代表は解雇を否定するも落合博満は怒り心頭
すると、この事態に、巨人の深谷球団代表は慌てて落合さんの解雇を否定し、「来年は白紙とは言ったが解雇とは言ってない」と取り繕い、落合さんを残留と発表。
しかし、落合さんはというと、怒り心頭で、
清原は（期限の）１２月３１日まで返事しなくていいんだろう。（自分の処遇は）清原待ちだな。失礼な話だ。オレが要らないなら、１０月でクビを切ればよかったんだ
（深谷代表の残留発表についても）飼い殺しはごめんだ
辞めさせたいんだろうが、オレは辞めないよ
などと、発言します。
巨人への怒りが収まらず、家族旅行先でも記者たちに爆弾発言を繰り返していた
その後も、落合さんは、家族旅行の静岡・川根町の温泉へ、記者たちも連れて行き、
おかしなもんだよな。最初はクビで次は残留。（FAで）来るときには散々いいことを言って、手のひらを返したようにポイか。フロントの誰かの責任問題だ、これは
などと、様々な爆弾発言を繰り返すと、
長嶋茂雄監督についても
今会ってもしょうがないよ
たとえ社長（渡辺・読売新聞社社長）に会っても同じ。どうせ言い訳を聞くだけだろうしな
と、斬って捨てています。
長嶋茂雄監督はいつもの調子だった
一方、長嶋監督はというと、
落合には昨日もおとといも電話を入れたけど、今は親子で温泉ということなんでね。連絡がついた時点で、サシでゆっくり話をするつもりですよ
こんなことはこの世界じゃ日常茶飯事なんだけどね
と、いつもの調子。
（長嶋監督は、読売新聞社系列紙のインタビューでは、自分の永久欠番３を清原選手に譲る構想まで打ち明けていました）
清原和博が巨人に入団
こうして、１１月２０日、巨人は、清原選手との直接交渉に臨み、深谷球団代表は１９８５年のドラフトでの裏切りを清原選手に謝罪するほか、条件も３年契約・年俸３億４０００万円（推定）を提示したそうで、清原選手はこれを受け入れ、巨人入りが決定。
１１月２４日、入団会見の当日には、渡辺社長は清原選手を社長室に招き入れて花束を贈呈し、「巨人軍の将来を担ってくれよ」と終身雇用まで匂わせる発言をしたといいます。
長嶋茂雄監督と4時間に及ぶ直接対談の末、巨人退団を決意していた
一方、１１月２５日、渡辺社長は、電話に一向に出ない落合さんに、ついに怒りを爆発させると、直接、引導を長嶋茂雄監督に渡し、１１月２７日、東京都内のホテルで落合さんと長嶋監督の直接対談が行われます。
その席で、長嶋監督は、落合さんに、清原選手のFA移籍が決まったことを伝えたうえで、
ウチに残るなら来季は代打やベンチが多くなる。１つのポジションを２人でとはいかないから
と、説明したそうで、
４時間に及ぶ話し合いの末、落合さんもついに退団（自由契約）を決意したのだそうです。
ちなみに、落合さんは、１１月２８日、渡辺読売新聞社長に対して、一連の球団批判を謝罪すると、長嶋監督も並んだ会見で、
監督との話の中では、どうしても清原くんと競合する。ベンチに座っている回数が多くなり、代打という形になる、ということでした。私と清原くんの問題で監督の悩む顔をこれ以上見たくない。そう言って身を引かせてもらいました
と、語り、涙をにじませています。
（落合さんは東芝府中（社会人野球）時代、後楽園球場へ長嶋監督の引退試合を見に行ったほど熱烈な長嶋ファンでした）
「落合博満が日本ハムとヤクルトに提示した交渉の条件とは？」に続く
長嶋茂雄監督とともに退団会見に臨む落合さん。
