阪神入団6年目の1979年、48本塁打を放ち本塁打王に輝くと、1982年には、35本塁打、95打点で本塁打王と打点王の二冠王、1984年には、37本塁打を放ち、3度目の本塁打王、という活躍で、「ミスタータイガース」と呼ばれるようになった、掛布雅之(かけふ まさゆき)さんは、1985年には、ランディ・バース選手、岡田彰布選手と共に、バックスクリーンに連続ホームランを放ち、後に、伝説の甲子園バックスクリーン3連発と言われるようになります。
「掛布雅之はトレードされたら引退しようと決意していた!」からの続き
1985年はスロースターターのランディ・バース次第で優勝できると思っていた
1985年、阪神は、(1964年以来遠ざかっていた)リーグ優勝が大きな課題となり、8年ぶりに吉田義男さんが監督に就任すると、3番ランディ・バース選手、4番掛布さん、5番岡田彰布選手で強力なクリーンアップを形成するのですが、
掛布さんは、優勝のカギは、春先に調子の上がらない(1割台の低打率にあえいでいた)バース選手のエンジンがいつかかるかにかかっていると思っていたそうです。
巨人に2対1とリードされていた
そんな中、4月17日、甲子園での巨人2回戦、阪神は1回表から、1番の松本匡史選手、2番の篠塚利夫選手に連打を浴びると、松本選手の盗塁は刺すも、3番のクロマティ選手に右翼席へ2ランホームランを打たれ、2点を先制されます。
すると、阪神も、1回裏、二死から3番のランディ・バース選手、4番の掛布さんが連続四球を選んだ後、続く5番の岡田彰布選手がタイムリーヒットを打ち、1点を返すのですが、その後は、巨人の槙原寛己投手に抑え込まれてしまいます。
巨人に1点追加され、3対1とリードを広げられるも、ランディ・バースが逆転3ランホームランを放つ
そして、阪神の先発の工藤一彦投手も好投を続けていたのですが、7回表、原辰徳選手に三塁打を打たれると、中畑清選手の犠牲フライで1点を追加され、3対1とリードを広げられます。
それでも、阪神は、7回裏、先頭打者の8番の木戸克彦選手が中前打で出塁すると、代走の北村照文選手が盗塁に成功。その後、代打の長崎啓二選手が凡退、1番の真弓明信選手が四球、2番の弘田澄男選手がレフトフライに倒れて、二死一、二塁という場面、
3番のバース選手が、槙原寛己投手の初球、シュート回転して甘く入ってきたストレートをバックスクリーンへ3ランホームランし、逆転したのでした。
(バース選手は、それまで、開幕から15打数2安打6三振で本塁打ゼロという成績でした)
ランディ・バース、岡田彰布と共にバックスクリーン3連発
すると、4番の掛布さんも、初球、ストライクの変化球を見逃し、2球目、ボール球を見送ると、カウント1ボール1ストライクから真ん中高めにきたストレートをバックスクリーン左のスタンドに連続ホームラン。
さらには、5番の岡田選手も、2球目の外角スライダーをバックスクリーンにホームランしたのでした。
バースに続くホームランは狙い通りだった
ちなみに、掛布さんは、後日、槙原寛己投手に、
(バース選手に打たれたシュートは失投だが)掛布さんには渾身(こんしん)の真っすぐをセンターへ運ばれ、頭が真っ白になった。(岡田選手にどんな球を投げたのかはショックで覚えていない)
と、言われたそうですが、
実は、掛布さんは、バース選手が生還し、興奮冷めやらぬ甲子園で、冷静な対決の空気に変えようと仕掛けを遅らせていたそうで、
まず、初球、ストライクの変化球を簡単に見逃し、2球目はボール球を見送ると、カウント1―1で、「一番自信のある真っすぐが来る」と読んでいたという、真ん中高めにきたストレートを、うまくバットをかぶせて打つことができたのだそうです。
(バース選手、掛布選手、岡田選手のクリーンアップが3者連続で甲子園球場のバックスクリーン方向へ本塁打を叩き込んだこの出来事は、「甲子園バックスクリーン3連発」(「伝説の3連発」)と呼ばれ、今でもファンの間で伝説として語り継がれているのですが、実は、この後、巨人には、原辰徳選手とクロマティ選手にもバックスクリーンに2者連続ホームランを打たれて追い上げられており、阪神は6対5で辛くも巨人を下しています)
阪神の21年ぶりのリーグ優勝&球団初の日本一に大きく貢献
さておき、バース選手、掛布さん、岡田選手は、この後も好調をキープし、バース選手は、打率3割5分、54本塁打、134打点で三冠王とMVP、掛布さんも、全130試合に出場し、打率3割、40本塁打、108打点、岡田選手も、打率3割4分2厘、35本塁打、101打点、また、真弓明信選手も、3割2分2厘、34本塁打、84打点と、凄まじい成績を残し、阪神は、1964年以来21年ぶりのリーグ優勝と、球団初となる日本一を果たしています。
「掛布雅之は1986年の度重なるケガから輝きを失っていった!」に続く