アメリカ進出を成功させた「The Beatles」は、その後、デンマーク、オランダ、香港、オーストラリア、ニュージーランドと世界ツアーを行っているのですが、１９６６年、ついに、日本にも上陸します。
「ビートルズのデビューシングルは？アメリカでは苦労していた？」からの続き
厳重な警備体制の中、日本に到着
「The Beatles」は、１９６６年に唯一の日本公演を行っています。
６月２４日から３日間、ドイツ公演が行われると、その後が日本公演でした。
そして、台風の影響により、予定より１１時間ほど遅れ、６月２９日水曜日午前３時３９分に日本航空機で羽田空港に到着した「The Beatles」は、日本航空のハッピを着て、タラップを降りたのでした。
ちなみに、世界各地での「The Beatles」の騒動を伝え聞いていた日本の警察は、空港での混乱に備え、ヘリコプターを3機用意するほか、横田基地にも緊急着陸の準備をし、羽田空港、ホテル、沿岸警備に警官3万人を動員するなど、厳重な警備体制を敷いていたそうです。
右翼団体が反対
また、公演は「日本武道館」で行われたのですが、実は、「日本武道館」でポップ・ミュージックが演奏されるのは、初めてのことで、
武道館は、日本武道振興の為に作られた伝統的格闘技の殿堂であり、そこでロック・コンサートを行うなどとは武道館の精神を冒とくし日本の若者を伝統的な価値観から堕落させる。
と、右翼団体などが猛反発し、街宣車が出動。
さらには、「Beatles Go Home」と書いた横断幕の前で街頭演説をする者が現れるなど、「The Beatles」を批判する者もいたほか、
実際に「The Beatles」に対して脅迫を行う者もいたことから、警視庁は大規模な警備体制をとり、会場内１万人の観客に対し、なんと、３千人もの警官を配備して監視を行ったそうです。
ちなみに、このことに対し、
ポール・マッカートニーさんは、
例えば、日本の舞踏団がイギリスに来たとしても、イギリスは伝統を冒とくされたとは言わないと思うよ。僕らは演奏をしにきただけだ。。。僕らだってある意味じゃ伝統的だよ。
ジョン・レノンさんは、
格闘するより歌の方がいいでしょ
と、コメントされていたそうです♪
静か過ぎたコンサート
こうして、「The Beatles」は、６月３０日、７月１日、７月２日の昼・夜と、３日間で計５回のコンサートを「日本武道館」で行ったのですが、
万全の警備が功を奏し、事故や暴動などの問題は起きなかったものの、（危険防止のため）アリーナ席にお客を入れないうえ、観客が立ち上がったり、近づいたりすることも禁止されていたことから、
会場が静か過ぎて、自分達の演奏が聴こえた「The Beatles」のメンバーは、最初のステージで自分達の音が合っていないことに気づき、ショックを受けたそうで、
ジョージ・ハリスンさんは、最初のステージが終わった後、
今日の「恋をするなら」は、ぼくがこれまでやってきたなかで最低だったよ。最近のツアーでぼくたちの演奏はこんなものなんだよ。
と、発言されており、
「The Beatles」とツアーメンバーは、次のステージまでに急いで改善しようと努力されたのだそうです。
前座は？
ちなみに、この時、司会を務めたのは、E･H･エリックさんで、前座を、尾藤イサオさん、内田裕也さん、望月浩さん、桜井五郎さん、ジャッキー吉川とブルーコメッツ、ブルージーンズ、ザ・ドリフターズ（6月30日・7月1日のみ）が、務められているのですが、
後に、ポール・マッカートニーさんは、
ハロー・ビートルズ、ウェルカム・ビートルズ、といった歌が聴こえて来た。音楽性は高くないがそういう歓待は嬉しかった。
と、語っておられました。
（このとき歌われた楽曲「ウェルカム・ビートルズ」は1966年9月10日発売の「ジャッキー吉川とブルーコメッツ」のアルバム「青い瞳／青い渚 ブルー・コメッツ・オリジナル・ヒット集」に収録されているそうです）
ホテルに缶詰状態
また、「The Beatles」のメンバーも、ファンが殺到することによる混乱を避けるため、分刻みのスケジュール管理で著しく行動を制限されており、日中は滞在先のヒルトンホテルに、ずっと缶詰状態だったそうで、
そのため、メンバーが外出しなくても不自由しないようにと、ホテルの中には、着物屋ほか様々な日本のおみやげもの売り場が用意されていたそうですが、
やはり、それだけでは物足りず、ポールさんとジョンさんは、こっそりホテルから外に抜け出し、買い物に出かけたり、皇居の周りを散歩するなど、日本を満喫されていたとか。
ただ、すぐに警察に見つかり、ホテルに連れ戻されてしまったそうです（笑）
連れ戻されるポールさん（左）。
日本を旅立つ
そして、１９６６年７月３日午前１０時４２分、「The Beatles」は日本を旅立ち、次の国フィリピンへと向かったのでした。
ちなみに、「The Beatles」は、解散後、ソロでは何度か来日しているものの、「The Beatles」が4人で来日したのは、この時が最初で最後。
それだけに、この貴重な公演を観た日本人の多くが、「The Beatles」に大きな影響を受けたのは想像に難くありませんね。
「ビートルズがフィリピンで殺されそうになったイメルダ事件とは？」に続く
