「西遊記」の三蔵法師役ではその美貌が話題になるも、相変わらず、「お嬢様芸」とその演技に関しては評価が低かった、夏目雅子(なつめ まさこ)さんですが、1980年、テレビドラマ「ザ・商社」で体当たりの演技を披露すると、ついに、「お嬢様芸」のイメージを払拭。そして、さらに、夏目さんの飛躍は続きます。

「夏目雅子の若い頃は西遊記の三蔵法師役の美しさが話題に!」からの続き

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「鬼龍院花子の生涯」でブルーリボン賞主演女優賞

夏目さんは、1982年、宮尾登美子さんの同名小説を原作とする、映画「鬼龍院花子の生涯」で、土佐高知の俠客・鬼龍院政五郎(仲代達矢さん)とその娘・花子の半生を、養女の立場から見つめる作品の語り部・松恵役で映画初の主演に抜擢されると、ヌードも披露されているのですが、

実は、そのヌード(松恵が政五郎に襲われる)シーンでは、当初、代役が立てられる予定だったそうです。

しかし、

他の出演者の女優さんが何人か脱いでいるのに、自分だけ脱がないのはおかしい。私も脱いで演技します。

と、夏目さんご本人がヌードになることを希望したそうで、

事務所の猛反対を押し切ってヌードシーンを演じるほか、強い熱意で作品に臨むと、夏目さんが啖呵を切るセリフ、「なめたらいかんぜよ!」も大流行となり、映画は大ヒットを記録。

夏目さんは、この年、「ブルーリボン賞主演女優賞」を受賞されているのですが、授賞式では、

これからもお嬢さん芸でがんばりたいと思います

と、スピーチされています(笑)

松恵役はもともと大竹しのぶだった

ところで、この「鬼龍院花子の生涯」で脚本を担当した高田宏冶さんによると、当初、松恵役は、大竹しのぶさんにオファーされていたのだとか。

ただ、大竹さんは、「東映」京都撮影所を怖がっていたほか、監督の五社英雄さんの評判が悪かったこともあって、一向にオファーを受けられなかったそうで、仕方無しにという感じで、夏目さんにオファーがいったのだそうですが、

高田さんは、

最後に(夏目さんが)鬼政(政五郎)に向かって「お父ちゃん、好きや」と言うシーンは、スタッフやカメラマンが泣いて撮影にならなかったくらい。

その美しさは大竹しのぶじゃ成立してなかったやろな。五社さんは「大竹がなんぼのものじゃい!」の一念で撮ったらしいし。

と、結果的に、夏目さんだったからこそ、この映画が成功を収めたことを明かされていました。

台本の上に正座して自らを売り込んだ?

また、「東映」の社史に書かれた、五社監督の話によると、松恵役にハマる女優がなかなか見つからず、企画スタート時から、製作は一時中断に追い込まれたそうで、

スタッフ総出となって必死に女優探しに奔走し、ようやく発掘したのが、当時、「文学座」に所属していた夏目さんだったそうですが、

夏目さんは、自ら五社監督に電話をし、

わたしはモデル上がりの女優の卵です。今度の映画の企画のことを知りました。ぜひ、わたしにやらせてください。

と、ハキハキとした声で話すと、その後、10分も経たないうちに、五社さんの自宅を訪問。

五社さんは、直接交渉には応じないタイプだったため、

帰ってくれ

と、言いかけたそうですが、

その言葉の終わらないうちに、夏目さんは、いきなり、「鬼龍院花子の生涯」の台本を玄関の土間に置くと、その上に正座をし、両手をついて、

このホンにのりました

と、言ったそうで、

実のところ、五社さんは、夏目さんに対しては、「西遊記」三蔵法師の「お嬢様芸」のイメージしか持っていなかったそうですが、この件で、意表を突かれ、

思案する余裕も与えない夏目の火のような熱意を感じた

と、思われたのだそうです。

五社の作り話だった?

ただ、この話、五社さんの娘・巴さんによると、

サービス精神旺盛な父が、時として会話さえも相手が喜ぶように自分流に脚色したのではないか。

と、五社さんの話が作り話だった語っています。

本当のところは、夏目さんは、マネージャー同伴のうえ、プロデューサーの事務所で、五社さんと初めて会うと、初対面にもかかわらず、ものおじすることなく、人懐っこい笑みを浮かべながら、

松恵の役を自分ができたらラッキーだ

などと、屈託なく話されたそうで、

五社さんは、そんな夏目さんの度胸と凛とした美貌を大変気に入り、抜擢となったのだとか。

ちなみに、夏目さんは、当時、すでに人気女優ではあったものの、新人ということもあり、映画のヒロインを張るには役不足で、映画はヒットしないのではと、製作サイドの「東映」には思われ、最後まで夏目さんの起用は渋られたそうですが、

セットも既に完成し、どうにかクランクインまでこぎつけた、という経緯があったことから、夏目さんが起用されたそうで、決して夏目さんの為にお膳立てされたものではなかったそうです。

出演作品(テレビドラマ)

それでは、ここで、夏目さんの主な出演作品をご紹介しましょう。

テレビドラマでは、

1976年「愛が見えますか」」
1977年「すぐやる一家青春記」
     「花ぼうろ」
     「横溝正史シリーズ『悪魔の手毬唄』」
     「あの手この手お隣りさん!」
     「土曜ワイド劇場 年上の女/禁じられた恋の炎」
     「どうなってるの!? 」
     「新・二人の事件簿 暁に駆ける!」第28話


「横溝正史シリーズ『悪魔の手毬唄』」より。

1978年「希望の大地-75万人の日系ブラジル移民-」
     「明日の刑事 第27話「ルート88!看板娘が見た殺人」」
     「オレの愛妻物語」
     「あすなろの詩」
     NHK大河ドラマ「黄金の日日」
     「Yの悲劇」
     「桃太郎侍」第82話
     「西遊記」
     「西遊記II」


「西遊記」より。(左から)夏目さん、岸部シローさん、西田敏行さん。

1979年「東芝日曜劇場『露玉の首飾り』」
     「風の隼人」
     「鉄道公安官」 
     「騎馬奉行」 
1980年「木曜ゴールデンドラマ『国境の固き約束 13歳の出発』」
     「木曜ゴールデンドラマ『チャップリン暗殺計画 世界の喜劇王を救ったのは誰か?』」
     「木曜ゴールデンドラマ『さすらいの甲子園』」
     「銭形平次」第615話、第716話
     「サンキュー先生」第1話
     「ゴールデン劇場 虹子の冒険」
     「松本清張シリーズ『ザ・商社』」


「松本清張シリーズ『ザ・商社』」より。山崎努さんと夏目さん。

1981年 NHK大河ドラマ「おんな太閤記」
     「ダウンタウン物語」
     「野々村病院物語」
1982年「木曜ゴールデンドラマ『非行主婦・アル中の女』」
     「野々村病院物語II」
     「ザ・サスペンス」
     「陽のあたる場所」
     「花の影」
     「金曜ミステリー劇場『六月の危険な花嫁』」
     「時代劇スペシャル 丹下左膳 剣風!百万両の壺」
     「サントリー・ドラマSP 幕末青春グラフィティ坂本竜馬」
     「ちょっと噂の女たち『黒田軟骨の女難』」


「野々村病院物語」より。津川雅彦さんと夏目さん。

1983年「妻は告白する 女の体の中には自分でも気づかない魔性がいた!」
     「火曜サスペンス劇場『女の中の炎』」
     「どっきり天馬先生2 僕らの街にスゴーイ美人がやってきて…?」
     NHK大河ドラマ「徳川家康」
1984年「乙女学園男子部」


NHK大河ドラマ「徳川家康」より。

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出演作品(映画)

映画では、

1977年「俺の空」
     「トラック野郎・男一匹桃次郎」
1980年「二百三高地」
1981年「魔性の夏・四谷怪談より」
1982年「鬼龍院花子の生涯」
     「大日本帝国」
     「FUTURE WAR 198X年」


「トラック野郎・男一匹桃次郎」より。菅原文太さんと夏目さん。

1983年「時代屋の女房」
     「小説吉田学校」
     「南極物語」
     「魚影の群れ」
1984年「瀬戸内少年野球団」
     「北の螢」


「魚影の群れ」より。夏目さんと佐藤浩市さん。


「瀬戸内少年野球団」より。

ほか、数多くの作品に出演されています。

「夏目雅子の死因は?白血病は寛解していた!」に続く

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