破天荒過ぎる夫・勝新太郎さんに、振り回されっぱなしだったにもかかわらず、いつも、一途な想いを口にされていた、中村玉緒(なかむら たまお)さん。しかし、さすがの中村さんでも、切なくて泣いてしまった出来事があったそうです。
「中村玉緒は明石家さんまと着物プロデュースで借金14億円を完済していた!」からの続き
勝新太郎への一途な想い
借金、アヘン、大麻、コカインと、散々、夫の勝新太郎さんに振り回されるも、
1997年に勝さんが亡くなった際には、
世間は私たちが勝を我慢していたように思っていますが、本当は勝が私たちを我慢していました。
生まれ変わってもあの人と一緒になりたい
と、おっしゃっていたほか、
2020年、「直撃!シンソウ坂上」(2月13日放送)に出演された際にも、MCの坂上忍さんに、
(勝さんと)離婚を考えたことがあるか?
と、尋ねられると、
一回もない、なんの恨みもない
と、答え、
どんなことがあっても勝新太郎についていく、子どもが2人おりましたから。ずっと死ぬまで勝新太郎の妻でいようと、その信念は変えなかった。
と、勝さんに対する一途な想いを口にされていた中村さんですが・・・
中村さんと勝新太郎さん。
勝新太郎が黒澤明監督作品「影武者」を降板させられる
そんな中村さんでも、切なくて泣いてしまった出来事があったそうです。
それは、勝さんが、黒澤明監督の「影武者」(1980)という映画の主役・武田信玄とその影武者役に抜擢された時のことで、
役作りへのこだわりが強かった勝さんは、黒澤監督の楽屋を訪ねると、自分の演技をチェックしたいから撮影現場に自分だけを撮影するカメラを設置したい、と申し出たそうですが、
黒澤監督はというと、
断る!そんなことされたんじゃ気が散ってしょうがない。あんたは自分の役に集中していればそれでいいんだ。余計なことはするんじゃない!
と、一蹴。
これに、勝さんはカンカンになって楽屋を出ていくと、ワゴン車に入ったまま出てこなくなったそうで、
プロデューサーがなだめても埒が明かなかったことから、黒澤監督が直接説得に行くと、
俺はこういう役者だから、こんな気分では芝居はできない。
と、言い放ったそうで、
勝さんのワガママに我慢ならなくなった黒澤監督は、ついに、(しかし、とても冷静に)勝さんを降板させたのでした。
(ちなみに、それを聞いた勝さんは、黒澤監督に掴みかかろうとしたそうですが、プロデューサーに羽交い締めにされ、止められたそうです)
「影武者」より。武田信玄に扮する勝新太郎さん。
勝新太郎が「世界のクロサワ」にダメ出し?
その後、「影武者」の主役は、仲代達矢さんが起用されたのですが、まだ未練のあった勝さんは、いろいろな人に相談して復帰を画策するのですが、結局、願いは叶わず、映画は完成。
すると、勝さんは、誰にも呼ばれていなかったにもかかわらず、映画「影武者」の試写会に一人で堂々と出席。
取材を受けた際には、
俺が出たら変わったような気がする。これは言えないけど、映画人としてはっきり言えば失敗だと思う。
と、あろうことに、すでに「世界のクロサワ」となっていた黒澤監督にダメ出しされたのでした。
(ちなみに、勝さんがダメ出しされた、仲代さん主演の「影武者」は、カンヌ国際映画祭で、最高賞「パルムドール」を受賞しています♪)
試写会を夢見てドレスを用意していた
ただ、中村さんはというと、勝さんが黒澤監督映画の主演に決まった時、2人で華やかな試写会に出席する日を夢見て、人知れず、ドレスを用意されていたそうで、
それが、勝さんの降板で叶わなかったことから、ひとり、自宅のテレビで試写会の様子を見ながら、
何だかわからないけど、自然と涙がぼろぼろ、ぼろぼろ出てきて
と、泣かれたのだそうです。
ちなみに、勝さんは、晩年、バラエティ番組に出演する中村さんを病室のテレビで見ることが唯一の楽しみだったそうですが、ついに、中村さんがテレビの前で泣いていたことは知らずじまいで、1997年に「下咽頭ガン」で亡くなっています。