1968年、NHK朝の連続テレビ小説「あしたこそ」のオーディションを受け、見事、ヒロインに抜擢され、テレビドラマデビューすると、1970年頃には、「文学座」を退所し、飛躍を図った、藤田弓子(ふじた ゆみこ)さんですが、しばらくは、なかなか思うような役柄に恵まれず、悩んだといいます。
「藤田弓子が若い頃は朝ドラ「あしたこそ」のヒロインに抜擢されていた!」からの続き
「小川宏ショー」でサブ司会(アシスタント)を務める
1970年(25歳)頃には、自分の可能性を試してみたいと思い、「文学座」を退所しフリーとなった藤田さんですが、童顔で声が高めだったことから、若い人の役のオファーしか来ない状態だったそうで、このままでは、大人の女性の役ができないのでは・・・と、悩み始めたそうです。
そんな時(2~3年経った頃)、「小川宏ショー」のサブ司会(アシスタント)のオファーが舞い込んできたそうで、当初は女優とはまったく違う世界だと戸惑ったそうですが、
一度、お芝居から離れて、異なる分野にチャレンジし、20代後半は自分の引き出しを増やしておこうと考え、このオファーを引き受け、1973~1975年まで、「小川宏ショー」で司会のアシスタントを務められたそうです。
「小川宏ショー」より。(左から)松倉悦郎さん、藤田弓子さん、小川宏さん、露木茂さん。
30歳の時には「週間プレイボーイ」でヌードを披露
こうして、藤田さんは、2年間お芝居を離れ(端役で映画には出演されていたようですが)、「小川宏ショー」に出演されると、契約が切れる頃には、契約の延長を持ちかけられるも、映画に出演したい思いが強くなっていたそうで、契約延長の話を固辞。
そして、再び、女優でやっていこうと、気持ちを新たにされたそうで、「大人の女性」をアピールするため、なんと、「週間プレイボーイ」誌上で大胆なヌードを披露するなど、30歳のこの年を「女優元年」と決めて再出発されると、以降、テレビドラマや映画に多数出演。
すると、念願叶って、1981年には、小栗康平監督の「泥の河」で、大阪の中之島を下って流れる安治川の河口近くの橋のたもとにある、しがない食堂を営む店主(田村高廣さん)の妻、
「泥の河」より。田村高廣さんと藤田弓子さん。
1982年には、若松孝二監督の「水のないプール」で、クロロホルムを使って意識を失った若い娘に性的暴行を働く夫(内田裕也さん)の妻、
「水のないプール」より。内田裕也さんと藤田弓子さん
1985年には、大林宣彦監督の「さびしんぼう」で、主人公の少年(尾美としのりさん)の母親役など、重要な助演が続き、
「さびしんぼう」より。富田靖子さんと藤田弓子さん。
「泥の河」では、舞台となった安治川の河口近くの橋のたもとに、本当に実直な人が暮らしているかのような、細やかな演技が絶賛され、「さびしんぼう」では、そのコミカルな演技で「キネマ旬報最優秀賞助演女優賞」を受賞するなど、確固たる映画女優の地位を確立されたのでした。
朝ドラ「マー姉ちゃん」では母親的存在でキャスト・スタッフから慕われていた
そんな藤田さんは、テレビドラマでも、1979年、NHK朝の連続テレビ小説「マー姉ちゃん」で、33歳の若さにして、4姉妹の母親役を好演し、お茶の間に明るく気丈な母親のイメージを印象付けられているのですが、
同作品でヒロインを演じた熊谷真実さんよると、朝ドラの撮影は1週間にリハーサルが2日間、本番が3日間あったそうですが、毎週、本番の最終日には、藤田さんがごはんに連れて行ってくれたそうで、
熊谷さんは、
私のよさは、あまりかしこまらないところ。撮影現場で自分らしくのびのび過ごせたのは、藤田さんが見守ってくださったから。まさに第二の母ですね。
と、語っており、実際、今でも、スタッフ、キャストとみんなで集まるほど、仲が良いそうです。
というのも、実は、1963年、藤田さんが23歳の時、NHK朝の連続テレビ小説「あしたこそ」に出演された際、お父さん役だった中村俊一さんが、「番組は役者とスタッフ全員で創るものだ」と教えてくれたそうで、
(中村さんは、藤田さんにお父さんがいないことを知ると、お父さん代わりにもなってくれたそうです)
中村さんは、ドラマの中では、死んでしまう役だったため、途中から出番がなかったそうですが、それでも、撮影が終わる頃には現場に来てくれ、
家族のこういう雰囲気が画面に出るからね
と、言って、ごはんを食べに連れて行ってくれたことから、
藤田さんも、そんな中村さんの想いを受け継ぎ、
今度は私がやらなくちゃ
と、「飲みに行こう」「食べに行こう」「踊りに行こう」と、みんなを連れて行くようになったそうで、
藤田さんは、
(特にスタッフは、過酷な仕事の割に報われないことが多いため)一緒に作っているのにね。だからみんなでごはんを食べに行くの。そんなことをいまだにやっていますよ。やっぱり人に恵まれたんですね。スタッフもキャストもみんな良い人ばかりでしたから
と、リアルでも、みんなに慕われる包容力のあるお母さんだったようです♪
「マー姉ちゃん」より。(左から)田中裕子さん、藤田さん、熊谷真実さん。