17歳の時、国立劇場で上演された「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」で白菊丸役を演じた、坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)さんですが、坂東さんのあまりの美しさに魅了された、作家の三島由紀夫さんが、作家仲間の澁澤龍彦にもこのお芝居を観るように勧めると、澁澤さんもまた、坂東さんの美しさに魅了されたといいます。
「坂東玉三郎が若い頃は白菊丸の美しさで三島由紀夫を魅了していた!」からの続き
三島由紀夫は澁澤龍彦にも「桜姫東文章」を観るよう熱心に勧めていた
坂東さんは、17歳の時(1967年3月)、国立劇場で上演された「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」で白菊丸役を演じているのですが、
これを観て、若く美しい坂東さんにたちまち魅了されたという、作家の三島由紀夫さんと劇作家で演出家・演劇評論家の堂本正樹さんは、早速、作家仲間の澁澤龍彦さんにも、この「桜姫東文章」を観るように勧めたそうで、
澁澤さんいわく、「(二人から)あれはぜひ見ておくべきです」と、しきりに勧められたため、国立劇場で上演中だった「桜姫東文章」を観たそうです。
澁澤龍彦も坂東玉三郎の美しさに魅了されていた
すると、澁澤さんもまた、(三島さんたち同様に)坂東さんの美しさに魅了されたそうで、
澁澤さんは、その時のことを、著書「玉三郎 讃」や「魔法のランプ」で、
このとき初めて江ノ島稚児ヶ淵の場から本格的に上演された『東文章』(「桜姫東文章」) を見て、悪の美しさに輝く南北(作者・鶴屋南北のこと)の世界に私は堪能したのである。
持つべきものは友達で、いま思い返してもこれは貴重な体験だったと思っている。このときは 清玄が(守田)勘彌、 桜姫が(中村)雀右衛門で、 玉三郎は発端の稚児ヶ淵の場で、清玄と心中する白菊丸として登場しただけであった。
それでも花道を小走りに出てきた少年・玉三郎の、なよやかで、しゃっきりとして、気品のある美しさに息をのんだのを私はありありとおぼえている。
と、綴っています。
端役にして主演の中村雀右衛門よりも強烈な印象を残していた
ちなみに、坂東さん演じる白菊丸は、冒頭のほんの数分しか出番がなく、幕が開いて、花道から登場し、いくつかの台詞のやりとりの後、すぐに死んでしまう役だったそうですが、
このわずか数分間で多くの観客に強烈な印象を残したそうで、この時、主演(桜姫)を務めた名女形・中村雀右衛門(なかむら じゃくえもん)さんよりも端役の坂東さんの方が後々、語り継がれることとなったのだそうです。
「坂東玉三郎は白菊丸で三島由紀夫の長年の疑問を解決していた!」に続く
「桜姫東文章」で「白菊丸」を演じる坂東さん。