1957年、7歳の時に、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」で初舞台を踏んで以来、数多くの作品で女方を演じると、1970年代からは、シェイクスピア劇などにも出演するほか、海外のアーティストとコラボレーションを披露するなど、歌舞伎の枠にとらわれず、幅広く活動している、坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)さんですが、実は、映画制作や舞台演出なども手掛けています。今回は、そんな坂東さんの出演作品や手掛けた作品を画像を交えてご紹介します。
「坂東玉三郎はアンジェイ・ワイダの「ナスターシャ」で男女2役を演じていた!」からの続き
世界的チェロ奏者ヨーヨー・マとコラボレーション
坂東さんは、1988年8月29日、「歌舞伎座 創立百周年イベント」のひとつとして、チェロ奏者のヨーヨー・マさん、ピアノのエマニュエル・アックスさん、ヴァイオリンのヤンウク・キムさんによる、モーリス・ラヴェルの「ピアノ三重奏曲」に合わせて、創作舞踊を披露しているのですが、
このことをきっかけに、ヨーヨー・マさんと交流するようになると、1996年には、バッハの「無伴奏チェロ組曲第五番」をヨーヨー・マさんが弾き、それに合わせて坂東さんが踊るという、クラシック音楽とのコラボレーション「希望への苦闘」を公演しています。
(この映像はソフト化され、フランス・リヨンで開催された「ダンススクリーン96」でグランプリを受賞しています)
ちなみに、坂東さんは、
この曲を選んだのはヨーヨーさんです。彼はこれをいろんな表現でやってみたいんだと言っていました。でも、大変な作業でした。私は舞踊家ですから、曲を解読していくことが難しかったのです。
そこで、「どうしたらいい?」って聞いたら、彼が譜面を色分けして、たとえば、このテーマはこの楽章のここから生まれてきていると、そういう解説をしてくれたんです。それで踊ることができました。
と、語っています。
ミハイル・バリシニコフとバレエのコラボレーション
また、坂東さんは、1998年には、バレエダンサーで振付師のミハイル・バリシニコフさんと、銀座セゾン劇場で、初のジョイント公演「二人のカンタータ」を行っているのですが、これは、二人で企画し、6年がかりで実現した舞台だったそうで、
坂東さんは、そんなミハイル・バリシニコフさんについて、
ミーシャさんが10代半ばぐらいの頃、先輩に「一生、踊らずにいられないと思えるか」と聞かれ「はい」と答えたそうです。そして今の彼があるわけです。
踊らずにはいられない。表現や芸術とはそういうものではないでしょうか。ミーシャさんは大変まじめな方です。基本のバーレッスンを欠かさない。きっと今もしていらっしゃるんじゃないでしょうか。
そういえば、私たちが40歳近くになった頃、私が舞踊公演をしているとき、彼が偶然日本に来たんです。それで、飛行機を降りてすぐ、周囲に「玉三郎はまだ踊っているの?」と聞いたそうです。
やっぱり40歳ぐらいになって踊ることが大変だとお互いわかっていたんでしょうね。その後お会いしましたとき、私も「ミーシャ、まだ踊ってるの?」と。
お互いに「大変だよね」と言い合った覚えがあります。でも、そういった中でも、今できることは何だろうというのは、いつも考えていました。
と、語っています。
出演作品(歌舞伎)
それではここで、坂東さんの主な出演作品をご紹介しましょう。
歌舞伎では、
「鳴神(なるかみ)」で雲絶間姫(くものたえまひめ)役
「鳴神」で雲絶間姫に扮する坂東さん。
「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」で桜姫(さくら ひめ)役
「桜姫東文章」より。釣鐘権助に扮する片岡孝夫さん(左)と桜姫に扮する坂東さん(右)。
「義経千本櫻(よしつねせんぼんざくら)」で静御前(しずか ごぜん)役
「義経千本櫻」で静御前に扮する坂東さん。
「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」で阿古屋(あこや)役
「壇浦兜軍記」で阿古屋に扮する坂東さん。
「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」で八ツ橋(やつはし)役
「籠釣瓶花街酔醒」で八ツ橋に扮する坂東さん。
「花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)」で十六夜(いざよい)役
「花街模様薊色縫」で十六夜に扮する坂東さん(左)と清心に扮する片岡仁左衛門さん(右)。
「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」で白拍子花子(しらびょうし はなこ)役
「京鹿子娘道成寺」で白拍子花子に扮する坂東さん。
「鷺娘(さぎむすめ)」で鷺の精(さぎの せい)役
「鷺娘」で鷺の精に扮する坂東さん。
「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」で揚巻(あげまき)役
「助六由縁江戸桜」で揚巻に扮する坂東さん。
「鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」で蛍火(ほたるび)役
「鰯売恋曳網」より。蛍火に扮する坂東さん(左)と猿源氏に扮する十八世中村勘三郎さん(右)。
などで、当たり役となっているほか、
出演作品(テレビドラマ)
テレビドラマでは、
2020年 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」
「麒麟がくる」で正親町天皇に扮する坂東さん。
出演作品(映画)
映画では、
1979年「夜叉ヶ池」
1988年「帝都物語」
1990年「書かれた顔」
1991年「夢二」
1994年「ナスターシャ」
1995年「天守物語」
「天守物語」より。宮沢りえさん(左)と坂東さん(右)。
出演作品(近代劇)
近代劇では、
1975年「さぶ」
1976年「マクベス」
1977年「オセロー」
「天守物語」
「マクベス」より。平幹二朗さん(左)と坂東さん(右)。
1978年「日本橋」
1980年「鹿鳴館」
1979年「椿姫」
1983年「メディア」
「蒼き狼」
「サド侯爵夫人」
「サド侯爵夫人」より。
1984年「黒蜥蜴」
1985年「無法松の一生」
1987年「玄宗と楊貴妃」
1988年「ふるあめりかに袖はぬらさじ」
1989年「ナスターシャ」
1990年「華岡青洲の妻」
「サド侯爵夫人」
「黒蜥蜴」より。
1993年「エリザベス」
1999年「夕鶴」
2000年「海神別荘」
2008年「牡丹亭(昆劇)」
「エリザベス」より。
など数多くの作品に出演されています。
演出作品(舞台)
また、演出も、
1986年「ロミオとジュリエット」
1988年「ガラスの仮面」
1990年「なよたけ」
「黒蜥蜴」
1994年「海神別荘」
「ロミオとジュリエット」より。(左から)真田広之さん、松田洋治さん、山本享さん。
2003年「鼓童One earth tour supecial」
2006年「鼓童アマテラス」
2009年「鼓童打男〜DADAN」
2014年「鼓童ワン・アース・ツアー2014~永遠」
2017年「鼓童 幽玄」
「鼓童ワン・アース・ツアー2014~永遠」より。
と、手掛けるほか、
監督作品(映画)
映画の監督も、
1991年「外科室」
1993年「夢の女」
1995年「天守物語」
と、されています。
受賞・受章歴
そんな坂東さんは、
1970年「芸術選奨新人賞」
1971年「第8回ゴールデン・アロー賞演劇賞」
1978年「第15回ゴールデン・アロー賞演劇賞」
1981年「松尾芸能賞優秀賞」
1992年「泉鏡花文学賞特別賞」
1997年「モンブラン国際文化賞」
「第39回毎日芸術賞」
「第5回読売演劇大賞最優秀男優賞」
2009年「第57回菊池寛賞」
2011年「第27回京都賞思想・芸術部門」
2016年「日本芸術院賞・恩賜賞」
2018年「松尾芸能賞大賞」
2019年「高松宮殿下記念世界文化賞」
など、数々の賞を受賞するほか、
1985年には、「第3回都民文化栄誉章」
1991年には、「フランス芸術文化勲章シュバリエ章・中国文化大学名誉文学博士号」
2013年には、「フランス芸術文化勲章コマンドゥール章」
2014年には、「紫綬褒章」
なども、受章し、
2019年には、「文化功労者」、「日本藝術院会員」にも選出されています。