1969年1月の合同自主トレでは、長距離打者として高く評価されるも、2月に始まったキャンプでは、「内角高め」に弱いことが発覚した、田淵幸一(たぶち こういち)さんは、その後、連日、強化特訓に励むも、同月22日の阪急ブレーブスとのオープン戦では、内角高めを攻められ、全く歯が立たずに終わってしまったといいます。
「田淵幸一は阪神入団直後「内角高め」が全く打てなかった!」からの続き
後藤監督や村山実兼任コーチが内角打ちの特訓に付き合ってくれるも・・・
「内角の高め」が弱点と発覚した田淵さんは、連日、後藤監督がつきっきりでの強化特訓が始まったそうで、特訓には、後藤監督だけでなく、兼任投手コーチの村山実さんも、
ブチよ、もう少しホームベースから離れて立ってみ
と、率先して打撃投手を買って出てくれたそうですが・・・
阪急とのオープン戦では内角を攻められ打つことができなかった
1969年2月22日、高知・安芸恒例の阪急とのオープン戦で、4番で捕手として先発出場すると、1回無死一、三塁のチャンスでは、佐々木投手の胸元をつくストレートにあえなく空振り三振。その後も、四球、見逃し三振、投ゴロと3打数2三振に終わり、
翌日23日の高知市営球場で行われた第2戦も、4番で先発出場するも、内角攻めに3打数ノーヒット1三振に終わってしまったのでした。
(田淵さんが内角高めに弱いことは、相手投手にも伝わっていたのだそうです)
阪急の西本幸雄監督や巨人の前川八郎スカウト部長は阪神の育成を疑問視していた
そんな中、対戦相手・阪急の西本幸雄監督は、試合後、
バットの先が鋭く振れとる。打つコツさえ覚えたら素晴らしいホームラン打者になる。ただ、今のバッティングでは一つのツボしか打てないし、飛ばせんやろな。まぁ、時間はかかるかもしれんが物は一級品や。うまく育てることや
と、コメントしているのですが、
(そこには、「お前ら(阪神)に、よう育てられるかな?」と、言わんばかりの皮肉がたっぷりと込められていたそうです)
密かにスタンドで観戦していた、巨人の前川八郎スカウト部長はというと、西本監督よりももっとストレートに、
阪神は特打ちを、主にマシンでやらせていたと聞いています。実戦に強く、早く慣れさせるためには、生きたタマを打たせなきゃダメでしょう。
ウチだったら専属の打撃投手を付けて練習させます。特別扱いしてはチームのムードが壊れる?首脳陣がそれを恐れていたのでは、せっかくの財産を生かし切れないことになりますよ
と、語ったそうです。
周囲の声を気にしていなかった?
とはいえ、当の田淵さんはというと、
三振しても構わない-と思いっきり振ったら三振ばっかり。スイングは良かったけど肝心のバットにボールが当たらない。どうやってうまく当てるのかが課題ですね。気長に待ちます
と、言って、ニッコリ笑っていたといいます。
「田淵幸一の初ホームランはオープン戦60打席目でようやく出ていた!」に続く