入団1年目の1979年は、小林繁投手の大活躍に比べ、「怪物」としては、やや物足りない成績だった、江川卓(えがわ すぐる)さんですが、入団2年目の1980年は、最多勝、最多奪三振、最多完封の投手3冠、入団3年目の1981年は、最多勝、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振、最多完封の投手5冠の大活躍だったにもかかわらず、沢村賞を受賞することが出来ませんでした。そしてその理由というのが・・・

現役時代の江川卓

「江川卓は小林繁に勝つことに執念を燃やしていた!」からの続き

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江川卓は入団3年目の1981年は、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率、最多完封の投手5冠で巨人を4年ぶりの優勝に導いていた

入団1年目の1979年は、「空白の一日」騒動のペナルティを課されて6月からの登板だったこともあり、9勝10敗と、「怪物」としては、やや物足りない成績だった江川さんですが、

入団2年目の1980年は、34試合登板で、16勝(最多勝)12敗、勝率.571、防御率2.48、219奪三振(最多奪三振)、18完投、5完封(最多完封)、投球回数261回1/3で、ベストナインも受賞する素晴らしい活躍をみせると、

3年目の1981年は、31試合登板で、前年をさらに上回る、20勝(最多勝)6敗、勝率.769(最高勝率)、防御率2.29(最優秀防御率)、221奪三振(最多奪三振)、20完投(最多完投)、7完封(最多完封)、投球回数240回1/3で、巨人を4年ぶりのリーグ優勝に導き、2年連続のベストナインに加え、MVPにも選出されています。

(投手5冠(最多勝利、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振、最多完封)は日本プロ野球史上6人目、2リーグ分立後3人目で、江川さんは、2024年現在セ・リーグ最後の達成者となっています)

江川卓が沢村賞を受賞できなかったのは「人格的に問題がある」から?

こうして、2年連続で先発投手として素晴らしい成績を残した江川さんですが、その年に最も活躍した先発完投型の投手に送られる沢村賞は、1980年は該当者なし、1981年は、江川さんではなく、同僚の西本聖投手でした。

(西本聖投手の1981年の成績は、34試合登板で、18勝12敗、勝率.600、防御率2.58、126奪三振、14完投、3完封、投球回257.2)

そして、その理由というのが、「(江川さんの)人格的に問題がある」(沢村勝を受賞するにはふさわしくないという意味)だったそうで、

江川さんは、著書「たかが江川されど江川」で、

冗談じゃない!! 僕があれこれ言うことで西本君の獲得した沢村賞の価値を下げたくはないし、そんなつもりも毛頭ないけれど、これだけははっきり申し上げたい。選考にあたった皆さん方、冗談じゃないですよ!!と。人格うんぬんとおっしゃるなら、どうぞそれをごくごく具体的に示してほしい。

精一杯投げ、それなりの成績を残す――それが、投手としての僕が評していただくべきすべてであると思っている。そんな僕のピッチングのどこに、どのような人格的問題があるのか?そもそも人格とは、どのようにして測定するものなのか?また、それまでの沢村賞受賞者の場合、人格などというものが、一度でも問題にされたことがあったのか? 悔しかった。そして、残念だった。

と、怒りを綴っています。


たかが江川されど江川

江川卓は巨人ファン以外からも同情の声が多く集まり、これをきっかけに「空白の一日」でついたダーティーなイメージが徐々に払拭されていった

ちなみに、当時(1981年まで)の沢村賞は、プロ野球担当の新聞記者(東京運動記者クラブ部長会)による投票で決定されていたのですが、この年の西本聖投手の受賞を巡る経緯が物議を醸したことから、翌1982年5月14日に同会が沢村賞選考を辞退し、同年から、現在の形であるNPBの元先発投手のOBを中心とした選考委員会方式に改められています。

また、さすがに、巨人ファンはもちろん、それ以外のプロ野球ファンからも江川さんには同情の声が多く集まり、このことがきっかけで、「空白の一日」騒動以来の江川さんのダーティーなイメージも徐々に薄れていったのでした。

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沢村賞の選考基準

1981年まで

1981年までは、読売新聞社に委嘱された東京運動記者クラブ部長会が、

  • 20勝以上
  • 勝ちと負けの差が10以上
  • 防御率2点台以下
  • 奪三振率
  • 優勝への貢献度

などを基準に、沢村賞を決めていました。

1982年以降

1982年以降は、NPBの元先発投手のOBを中心とした選考委員会が、

  • 15勝以上
  • 防御率2.50以下
  • 150個以上の奪三振
  • 完投10試合以上
  • 投球回数200イニング以上
  • 25試合以上の登板
  • 勝率6割以上

の、7項目を選考基準として沢村賞を決めています。

(ただし、必ずしも7項目全てクリアしなければならないという規定はない )

また、2018年から、補足項目として、「先発で登板した全試合に占める、投球回数7回で自責点3点以内」というQSに似た独自の基準も選考に含めることになっています。

「江川卓は1軍デビュー戦で阪神・山本和行と対戦し過信が消えていた!」に続く

現役時代の江川卓

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