主に、三谷幸喜さんの作品でお馴染みとなっている、俳優の近藤芳正(こんどう よしまさ)さん。コメディ俳優としての印象が強い近藤さんですが、2015年には、冷徹な殺し屋を演じられるなど、新たな境地を開拓されています。
音楽に挫折した少年時代
近藤さんは中学生の時、音楽に目覚められ、
叔父さんのギターを借りて練習されたそうですが、
全然うまく弾けなかったのだとか。
そのギターが、クラシックギターで、
エレキギターのようにコードを弾くものではなかったことと、
当時の近藤さんにとっては、ギターが大きすぎたことが、
うまく弾けなかった原因だったと、
後になって分かったそうです。
ギターで挫折された近藤さんは、
今度はドラムに挑戦。
しかし、こちらのほうは、
リズムがうまくとれずに断念。
近藤さんは、音楽自体に挫折してしまい、
楽器にコンプレックスを抱くようになってしまったのでした。
仲間と、貸しスタジオで、
練習されたこともあったそうですが、
2日で仲間割れされたというから、
近藤さんと音楽は相性が良くなかったようですね。
しかし、音楽はダメだったものの、
美術、特に絵画は得意だったそうです。
コンテストに入賞
近藤さんは、子どもの頃、
サーカスに連れて行ってもらった時に見た、
「団員が空中ブランコに勢い良く飛びつく瞬間」
の絵を描いたそうです。
そして、コンテストで、その絵が、
見事入賞を果たしたのでした。
しかし、展覧会に絵を見に行くと、
上下逆さまに展示されており、
子供心に、すごくショックを受けられたそうです。
でも最終的には、それで高く評価されたのなら、
まあ、いいかな、と思われたのだとか。
どんな絵だったのか、見てみたいですね!
中学生日記に出演
ところで、近藤さんが、
演技に目覚められたきっかけは、
学芸会だったそうです。
「夕鶴」で「与ひょう」役を演じられた時、
拍手喝采を浴びたことから、
演技に興味を持たれたのだとか(^^)
それがきっかけとなり、
地元名古屋の児童劇団に所属され、
NHK名古屋放送局制作の「中学生日記」に、
1976年から1978年まで出演されたのでした。
近藤さんが15歳から17歳の時でした。
近藤さんは、このドラマで、
ちょうちん屋の息子、近藤芳正役を演じられているので、
この時の役名を、
そのまま芸名にされたのでしょうね。
大人に反抗する少年の役ということで、
当時の近藤さんの心境にリンクされていたのだとか。
近藤さんは、その理由をインタビューで、
当時は両親が離婚した時期でもあって、
「自分はここにいていいのだろうか?」
という葛藤を抱えていました。世の中に対して理由もなく反抗していたし、
罪を犯すのではないかと思うくらいの、
ドス黒いものが自分の中にあった。
と当時を振り返っておられました。
ちょうど、その頃と同じ時期に、
学校の先生がサイン帳に、
誰にでも宝はあります。
それを早く見つけてくださいね。
と書いてくれたそうで、
「この道が僕の宝」
と俳優が天職であることを、
確信された近藤さん。
その後、近藤さんは、俳優への道を、
一心不乱に突き進むことになります。
俳優を志す
近藤さんは、高校卒業と同時に、俳優を志され、
「中学生日記」の風間先生役をされていた、
俳優の湯浅実さんのもとで、
俳優になるべく、修行を始められたそうです。
そして、翌年の1981年、20歳の時、
湯浅さんが所属する「劇団青年座研究所」に入所、
1983年、22歳で卒業され、
「劇団七曜日」へ入団されています。
1984年、23歳の時には、初舞台を踏まれ、
「コント赤信号」や「東京乾電池」などの舞台に、
多く出演されたそうです。
演技の基礎訓練を受ける
具体的にいつ頃かは分かりませんでしたが、
近藤さんは20代の頃、
「ベラレーヌ・システム」という、
演技の基礎訓練を受けられたそうです。
このメソッドは、
翻訳家で演出家の岡田正子さんが、
1955年にフランスのパリで学んだ、
五感をフル回転させ、想像力を豊かにする
演技実践体系のことをいうのだそうです。
岡田さんは、このメソッドを、
コメディの老舗劇団「テアトル・エコー」で、
教えられており、
そこで訓練を受けられた近藤さんは、
それ以降も、このメソッドを実践されてきたのだそうです。
ちなみに、2014年、
近藤さんは、自身のワークショップで、
「ベラレーヌ・システム」を教えておられます。
三谷幸喜との出会い
近藤さんは20代の頃、
自分には個性がある。
役者としてのキャラクター性を、
意図的に確立できればいけるはず。
との思いがあったそうですが、
30代を目前に、
限界を感じられていたそうです。
そんな折、劇団「東京サンシャインボーイズ」
を率いておられた、三谷幸喜さんと出会われます。
(最前列左から)佐藤B作さん、宮地雅子さん、伊藤俊人さん、
(2列目左から)近藤芳正さん、阿南健治さん、相島一之さん、西村雅彦さん、
(3列目左から)西田薫さん、梶原善さん、小原雅人さん、
(4列目左から)甲本雅裕さん、野仲イサオさん、小林隆さん。
近藤さんは、「東京サンシャインボーイズ」の舞台に、
客演として出演を重ねるうちに、
三谷さんの才能に感化され、
俳優として食えなくても、
バイトをしながら、年に2、3回、
自分の好きな芝居をやれればそれでいい。
と、思えるようになったのだとか。
ご自身が、本当にお芝居が好きなことに、
気付かれたのでしょうね。
そうやって肩の力が抜けた途端、
三谷さんが、テレビドラマの脚本家として、
注目を集められるようになり、
それと同時に、近藤さんにも、
俳優としての仕事が舞い込むようになったのだとか!
そんな三谷さんとの縁から、
三谷さんの作品である、
1991年「12人の優しい日本人」
1997年「ラヂオの時間」
2001年「みんなのいえ」
2006年「THE 有頂天ホテル」
などに、次々と出演され、
名脇役としての地位を確かなものにされたのでした。
さらに、2001年には、
俳優の酒井敏也さんや山西惇さんと共に、
「劇団ダンダンブエノ」を、
2009年には、
ソロプロジェクト「バンダラコンチャ」を、
立ち上げられるなど、精力的に活動されています。
野良犬はダンスを踊る
そんな近藤さんは、2015年10月、
窪田将治監督の映画「野良犬はダンスを踊る」で、
キャリア初の主演を務められました!
年齢による衰えから、引退を決意した、
ベテランの殺し屋の葛藤を描いた、
ハードボイルドドラマということで、
近藤さんは、
主人公の黒澤宗之役を演じておられます。
この役を演じるに当たり、
芝居という「ごっこ」の中で様々な役を演じ、
暗い感情のようなものは消えていったけれど、基本的に自分は明るい人じゃないし、
内面的にも大人しい人間。コメディ作も好きですが、
普段は黙って人間観察をするようなタイプ。
だからこそ黒沢という役には、何も作らずに入れた。
と、主人公との共通点があることを、
明かされていました。
そして、
初主演、初ハードボイルド、初濡れ場!
53歳にして、初ものづくし~!!
ぜひ劇場でご覧下さい!
と、その喜びをコメントされていました(^^)
これまでとは、ひと味違う近藤さんが、
堪能できる映画となっていること間違いなしですね!
さて、少年時代から俳優一筋で、
名脇役として活躍され、
50代になって新境地を開拓された、
近藤さんの勢いは、
まだまだ止まりそうにありませんね♪
近藤さんからは目が離せません!!