小松政夫さんと共演したお笑い番組「みごろ!食べごろ!笑いごろ!」では、「ベンジャミン伊東」に扮し、こたつの上で歌い踊る「電線音頭」で小学生を中心に一大ブームを巻き起こした、伊東四朗(いとう しろう)さんですが、その真っ最中に、まさかのシリアスな役のオファーが来たといいます。
「伊東四朗の若い頃は小松政夫と電線マンで大ブレイクしていた!」からの続き
「電線音頭」ブレイク中に真面目な警官役のオファー
お笑い番組「みごろ!食べごろ!笑いごろ!」では、「ベンジャミン伊東」に扮し、こたつの上で歌い踊る「電線音頭」が、小学生を中心に一大ブームを巻き起こした伊東さんですが、
ちょうどその頃(1977年)、テレビドラマ「望郷 日本最初の第九交響曲〜板東俘虜収容所物語」の出演オファーが来たそうです。
ただ、その役柄というのが、第一次大戦中に徳島にあった俘虜収容所の交番に勤務した警官という、とても真面目で重要な役柄だったそうで、
伊東さんは、てっきり、オファーしてくれた人が、自分が「ベンジャミン伊東」だとは知らない人なのだと思い、
私、今、「電線音頭」で世間を騒がせていますが、こんな私が演じてもよろしいんでしょうか
と言ったそうですが、
その人は、
それがどうかしましたか。話を続けます。
と、平然とした顔で言ってくれたそうで、
伊東さんはそれが嬉しくして嬉しくて、この役を引き受けられたのだそうです♪
「てんぷくトリオ」の三波伸介が死去
その後、伊東さんは、1979年には、クイズ番組「ザ・チャンス!」の二代目司会者に起用されるなど、「てんぷくトリオ」ではサブ的な役割だったのが、単独活動ではたちまち引っ張りだことなっていくのですが、
1982年に、「てんぷくトリオ」の三波伸介さんが、52歳という若さで他界されると、
もう一人のメンバーの戸塚睦夫氏は、その9年前に42歳の若さで亡くなっていたから「とうとう、ひとりきりになってしまったか」と思いましたね。
私は人づき合いが良い方ではありませんから、積極的にトリオの売り込みをした三波氏の大きな翼の中で庇護(ひご)されながら、何とか笑いの世界を生きている感覚がありました。
ですから「こんな人間がこれからどうやって生きていくのかなあ」と寂しく、頼りない気持ちになったことは確かです。
と、伊東さんは、三波さんの訃報に接した際、茫然自失となって、座り込むほどのショックを受けたといいます。
また、伊東さんは、
戸塚さんが亡くなって、トリオができなくなったのも寂しかったけど、さらにその10年後に三波さんが逝くとは思ってもみなかった。衝撃を受けたし、自分も52歳という年齢を意識しましたね。
そのころから「自分から何かをやる、ということはやめよう」と思うようになりました。他人のほうが私のことを知ってる。だから人に任せたほうがいいって思うようになった。
とも、語っておられました。
朝の連続テレビ小説「おしん」が大ヒット
そんな折、伊東さんは、1983年、山形の貧しい農家に生まれた少女・おしんが、明治・大正・昭和という激動の時代を力強く生きていく姿を描いた、橋田壽賀子さん原作・脚本のNHK連続テレビ小説「おしん」に、娘のおしんに冷たくあたる父親・作造役で出演されているのですが、このドラマは、平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%を記録する大ヒット。
伊東さんは、このドラマへの出演以降、様々な役のオファーが殺到したそうですが、
「おしん」の父親役なんて、自分じゃ考えられなかったですよ。だってあの「電線に、スズメが三羽止まってた♪」の「電線音頭」の後ですよ?
と、伊東さん自身、とても驚かれたことを明かされています。
「おしん」で作造を演じる伊東さん。
「おしん」の長台詞に苦労する
ところで、伊東さんは、「おしん」の撮影に入る前、台本が30冊ぐらい来て、とても驚いたそうです。
というのも、橋田壽賀子さんの脚本は、セリフが長いことで有名なのですが、ある時などは、10ページくらい、1話のほとんどを一人でしゃべるシーンがあったうえ、
当時は、劇中で使うBGMをスタジオで流しており、音付けもその場でしており、スタッフから、
伊東さん、うまく計算して、音が終わる頃に戸から出ていってくれませんか
と、頼まれたそうで、
伊東さんは、
こりゃ、えらいことを頼まれたと思いましたけどね。
と、セリフはもちろん、メロディも覚えなければならなかったことが、とても大変だったそうです。
「おしん」では子役・小林綾子を本当に殴り飛ばしていた
また、作造が娘のおしんをぶち、おしんがぶっ飛んでいくというシーンでは、おしん役の小林綾子さんは、まだ子どもだったため、ある程度本気でぶたないと、飛んでいくということが嘘になると思い、
撮影の日には事前に、
今日、お父さんはほっぺたをバチーンとぶつけど、びっくりしないでね
と、小林さんに伝え、本当に、ドアのところまで飛んでいくぐらいぶったそうで、「おしん」は、それだけリアリズムのドラマだったそうです。
「伊東四朗と三宅裕司のコンビが息ぴったりで面白すぎる!」に続く
「おしん」より。泉ピン子さんと伊東さん。