アクションスターとして確固たる地位を築くも、「仁義なき戦い 広島死闘篇」では、シリーズ屈指の破天荒キャラ・大友役を演じ、その演技が絶賛された、千葉真一(ちば しんいち)さんですが、千葉さんは、その後、さらに、新たな境地に挑まれます。

「千葉真一は北大路欣也のワガママで仁義なき戦いの主役を交代させられていた!」からの続き

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映画「柳生一族の陰謀」がメガヒット

千葉さんは、1978年、徳川幕府内の兄弟による三代将軍の座を巡る争いを、史実にフィクションを織り交ぜ、権力に生きる柳生一族が存続に賭ける姿を描いた、壮大なスケールの時代劇「柳生一族の陰謀」で、主人公の柳生十兵衛役を演じられると、映画は興行収入30億円を売り上げるメガヒットを記録。

配給収入は16億2100万円~16億5000万円を記録し、同年の邦画配給収入3位となるなど、自身初の時代劇ながら、確固たる地位を確立されています。


映画「柳生一族の陰謀」

深作欣二監督と千葉真一にとって初の時代劇

ところで、この「柳生一族の陰謀」は、東映が威信を賭けて時代劇復興を目指し、12年ぶりに復活させた大型時代劇で、監督は深作欣二さんが務められているのですが、

実は、この作品は深作さんにとっても初の時代劇で、しかも、千葉さんが深作さんに提出した企画書「裏柳生」がベースとなっていたため、この企画の映画化が決定すると、深作さんは早々に、千葉さんを主人公の「柳生十兵衛三厳」役に起用。


「柳生一族の陰謀」より。

というのも、深作さんは、かねてより戦後の娯楽時代劇に否定的で、いつの日か、「東映」調のチャンバラ映画ではなく、かといって「黒澤リアリズム」黒澤明監督は現代劇・時代劇ともにリアリズムを徹底した映画を撮っていました)とも違う、もっとテンポのあるアクション時代劇を作りたいと思われていたそうで、

その期待に応えられる俳優は千葉真一、ただ一人しかない

と、考えておられたのでした。

映画バカと呼ばれ異端児扱いされていた

一方、千葉さんはというと、撮影が始まる前、深作監督がシナリオを書くために定宿としていた京都の旅館に、差し入れを持っては、何度も通い詰めて、部屋の隅に座り、

いや、違うだろ。そのセリフはシーン6のここに入れようよ

などと、深作監督と脚本家たちの討論を聞いては、

これが深作流の「脚本作りのリズム」だ

と、感銘を受け、後に千葉さんが監督業に進出した際には、このことがとても役に立ったそうですが、

いざ撮影が始まった後も、少しでも良い映像にしたいと、いろいろなアイディアを毎日考えて現場に持っていかれたことから、

スタッフからは、

千葉が来ると撮影に時間がかかる!

と、異端児扱い(「映画バカ」と呼ばれていたそうです)されていたのだそうです。

柳生十兵衛に惚れ込んでいた

実際、千葉さんは、

日本の素晴らしさや古き良き姿を語るのは、やはり時代劇しかないとずっと憧れていました。数多くの歴史の本や小説を読んで、一番魅力を感じたのが柳生十兵衛三厳が書いた「月之抄」という本。父親との確執そして裏切り…十兵衛の生き様はとにかくドラマティックなんですよ。

「月之抄」を読むと、人斬りにおいても、彼が自らの意志で動いていたのではないと受け取れますし、大政という動きの中で、翻弄された男なんです…十兵衛は。最初に僕が十兵衛の企画を出した時、深作監督は、間髪入れずに「これは面白い!」そう言ってくれました。

と、作品に臨まれた時のお気持ちを明かされています。

また、千葉さんは、

当時は「柳生十兵衛」という人物にまつわる書籍を読んだり、柳生家の歴史などについて調べたりしました。彼の人柄、生き方、そのすべてに惚れこんでいます。

出演した映画「柳生一族の陰謀」は史実を基に描いていますが、ぜひとも続編を作ってみたいですね。彼の42年の生涯のすべてをも演じきってみたい。

とも、明かされており、

千葉さん自身が主人公に惚れこんでいたことが、映画がメガヒットした大きな要因の一つに間違いありませんね。

連続ドラマ「柳生一族の陰謀」でも主演

ちなみに、映画「柳生一族の陰謀」が1978年10月3日に公開されると同時に、テレビドラマも同じ日から放送が開始され、毎週火曜日夜10時から10時54分、全39話が放送されています。

千葉さんは、映画と同じく、主演の柳生十兵衛三厳役を演じられているのですが、千葉さんにとっては、テレビドラマの時代劇初出演作となっています。

実は、この「柳生一族の陰謀」、関西テレビの開局20周年記念番組として、当初は、全26話、総製作費は8億円の予定で企画され、第1話では、映画と同じく、深作欣二さんが監督に起用されているのですが、深作さんは、なんと、第1話だけで3000万円以上も投じるほどの意気込みだったそうで、

関西テレビの岩崎義プロデューサーは、

関西好みの泥臭いドラマを避けて、東京向きの洗練されたアクションで魅せる

ことを目指していたのですが、

これが関西でハマり、 関西広域圏では、これまで、20%前後の視聴率でトップクラスの人気を誇っていた裏番組「プロポーズ大作戦」を一気に追い抜いて、第1話が25.6%の高視聴率を記録する大ヒットとなったとのこと。(関東は15.1%)


連続ドラマ「柳生一族の陰謀」より。(左から)千葉さん、目黒祐樹さん、志穂美悦子さん、島英津夫さん。

(ほかのキャストは、志穂美悦子さん、成田三樹夫さん、高橋悦史さんが同じ役柄で引き続き出演されているのですが、それ以外のキャスティングは大幅に入れ換えられ、千葉さんの弟・矢吹二朗さん、真田広之さん、萬屋錦之介さん、梅津栄さん、金子信雄さん、丹波哲郎さん、工藤堅太郎さんらは異なる役柄で出演されています。)

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「柳生一族の陰謀」では全アクションをスタントなしで

ところで、「柳生一族の陰謀」の見どころといえば、なんといってもアクションで、従来の時代劇では、主人公ひとりが大勢の敵を斬るという勧善懲悪だったのを、このこのドラマでは、柳生一族と根来衆らが集団戦闘しており、それらを千葉さんと「ジャパンアクションクラブ (JAC ) 」がダイナミックで、アクロバティックに演じられています。

千葉さんは、スタントなしで、爆破シーン、20メートルの崖から川へダイブ、竹をしならせての飛び降り、 馬の脇腹に隠れての乗馬などをこなされており、当時としては革命的な時代劇となったのですが、

やはり、千葉さんは、

体術を忍者から教わったり、アクションにはたくさん時間をかけましたね。おっしゃる通り、当時は“剣豪がなぜそんな動きをするのか?”と叩かれましたが、僕からすれば当たり前のことなんですよ。

十兵衛は人里離れた場所で忍びの者たちと暮らし、そこでの生活が一番幸せだったと書にも記してありますから。左目を失い、五体満足でなくなった男がどう生きたのか…徹底的に研究しました

と、柳生十兵衛に惚れこんで、調べ尽くしていたからこその、真っ当な回答をされています。

また、十兵衛の殺陣についても、

相手から責められないよう、死角をガードするような立ち回りも意識しました。十兵衛という男は、本来平和主義者なんです。ですから斬り合うシーンでは、常に斬った後の彼の心情を大切に演じていました。

彼は、どんな極悪な人間を斬っても、決して“これで良かった”という顔はしないんですね。どこかに虚しさを感じている…彼の生き様はそこに集約されていると思ったんです

と、完全に十兵衛になりきって演じられたことを明かされていました。

是非、この機会に、映画でメガヒットし、ドラマでも予定の26話を大きく延長する全39話となるヒットとなった「柳生一族の陰謀」、ご覧ください。

「千葉真一にタランティーノやサミュエルLジャクソンも虜になっていた!」に続く

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