「仁義なき戦い」シリーズ以降も、「復活の日」(1980)、「魔界転生」(1981)、「蒲田行進曲」(1982)、「里見八犬伝」(1983)、「いつかギラギラする日」(1992)、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994)など次々とヒットを飛ばし、2000年には「バトルロワイヤル」が大ヒットを記録した、深作欣二(ふかさく きんじ)さん。今回は、そんな深作さんの監督作品をご紹介します。
「深作欣二の仁義なき戦い撮影秘話!自らカメラ?ピラニア軍団とは?」
「柳生一族の陰謀」「魔界転生」などが次々とヒット
こうして、「仁義なき戦い」シリーズが大ヒットとなった深作さんは、監督に起用したプロデューサーの日下部さんから、
僕もプロデューサーとして初めてサク(深作)さんと組んだけど、役の作り方なんかはさすがだと思った。これに役者たちが期待以上の芝居をしてくれて、情熱にあふれた映画になったよね。
と、絶賛されると、
その後も、
サクさんも『柳生一族──』が初めての時代劇だったけど、今までの義理人情じゃなく、実録タッチでやろうよと。要は『仁義なき戦いの時代劇版』でいいじゃないかと。
最後に徳川家光のクビが取られるなんて史実にはない大ウソだけど、それを撮れるのが深作欣二だったんだ。
と、「東映」時代劇の復興作品である「柳生一族の陰謀」(1978)など、節目ごとに日下部さんから監督に起用されるほか、
「柳生一族の陰謀」より。
次々と映画を発表されると、「復活の日」(1980)、「魔界転生」(1981)、「蒲田行進曲」(1982)、「里見八犬伝」(1983)、「いつかギラギラする日」(1992)、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994)など、ヒットを飛ばします。
「バトルロワイヤル」が大ヒット
そして、2000年、無人島に集められた中学生同士が国家の命令で殺し合いをする姿を描いた、同名のベストセラー小説を原作とする、映画「バトル・ロワイアル」を発表すると、
「西鉄バスジャック事件」など少年犯罪が注目された時期で、公開前には、国会でこの映画に対する質疑が行われたこともあり、社会的な大きな関心を集めて話題を呼び、映画は、31.1億円の大ヒットを記録したのでした。
「バトルロワイヤル」より。
ちなみに、クラスメイト42名には、藤原竜也さん(七原秋也役)、前田亜季さん(中川典子役)、安藤政信さん(桐山和雄役)、山本太郎さん(川田省吾役)、栗山千明さん(千草貴子役)、柴咲コウさん(相馬光子役)、塚本高史さん(三村信史)ほか、後に人気俳優となる若手が数多く起用され、担任の先生にはビートたけしさんが起用されています。
戦争体験が原点に
ところで、この「バトル・ロワイアル」、実は、深作さんが、当時まだ中学生だった息子の健太さんが買ってきた、「中学生42人皆殺し」という本の帯の文字を見て衝撃を受け、まだ、中身を読んでいなかったにもかかわらず、
これは映画になる
と、直感し、
自分の思いをここならば昇華できる、そういう作品を作れる
と、確信して題材に選んだそうですが、
その「自分の思い」とは、ほかならぬ、深作さんの15歳の頃の戦争体験でした。
深作さんが住んでいた水戸は、爆撃機が空を覆う空襲の毎日の中、機銃掃射で住民はバタバタと死んでいき、通っていた中学校も焼失。
また、中学生が働いていた工場も爆撃されて、多くの死者を出したのですが、その死体を片付けるのも、同じ中学生。
そして、(少年兵として中学生でも出征していたことから)いずれは自分も出征せねばならないのか、そもそも、明日自分は生きているのかという不安の中、次々と人が死に、深作さんは生き残ったのですが、
空襲があると、友達の腹の下に潜り込んだ。
と、深作さんは、誰かを犠牲にして生き延びたことへの、罪の意識に苛(さいな)まれており、その思いを昇華するため、「バトルロワイヤル」を製作されたのかもしれません。
監督作品(テレビドラマ、映画)
それでは、ここで、深作さんの主な監督作品をご紹介しましょう。
テレビドラマでは、
1965年「スパイキャッチャーJ3 」第3話、第4話
1967年「泣いてたまるか」第48話
1968~1971年「キイハンター」第1話、第2話、第157話、第158話、第178話
1971年「ザ・ガードマン」第326話
1972~1973年「必殺仕掛人」第1話、第2話、第24話
1973年「アイフル大作戦」第31話
1974年「バーディ大作戦」第1話
「キイハンター」より。(左から)丹波哲郎さん、
谷隼人さん、野際陽子さん、大川栄子さん、千葉真一さん。
「東京警備指令 ザ・ガードマン」より。(左から)川津祐介さん、神山繁さん、宇津井健さん、藤巻潤さん、稲葉義男さん。
「バーディー大作戦」より。(後列左から)松岡きっこさん、倉田保昭さん、岡本富士太さん、
(前列左から)安西マリアさん、丹波哲郎さん、川口厚さん、谷隼人さん。
1974~1975年「傷だらけの天使」第1話、第3話
1975年「影同心」 第18話
1975~1982年「Gメン’75」第16話、第20話、第85話、第354話
1978年「柳生一族の陰謀」第1話
1982年「黒い館の女」
1990年「ダブル・パニック’90 ロス警察大捜査線」
1995年「阿部一族」
「傷だらけの天使」より。萩原健一さん。
「Gメン’75」より。(左から)宮内洋さん、千葉裕さん、古尾谷雅人さん、川津祐介さん。
映画では、
1961年「風来坊探偵シリーズ」
「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」
「風来坊探偵 岬を渡る黒い風」
「ファンキーハットの快男児シリーズ」
「ファンキーハットの快男児」
「ファンキーハットの快男児 二千万円の腕」
「白昼の無頼漢」
1962年「誇り高き挑戦」
「ギャング対Gメン」
1963年「ギャング同盟」
「風来坊探偵 岬を渡る黒い風」より。千葉真一さんと曽根晴美さん。
「誇り高き挑戦」より。鶴田浩二さんと大空真弓さん。
1964年「ジャコ萬と鉄」
「狼と豚と人間」
1965年「顔役」
1966年「脅迫 (おどし) 」
「カミカゼ野郎 真昼の決斗」
「北海の暴れ竜 」
1967年「解散式」
1968年「博徒解散式」
「黒蜥蜴」
「恐喝こそわが人生」
「ガンマー第3号 宇宙大作戦」
「狼と豚と人間」より。(左から)高倉健さん、北大路欣也さん、三國連太郎さん。
「黒蜥蜴」より。丸山明宏(現・美輪明宏)さんと木村功さん。
1969年「黒薔薇の館」
「日本暴力団 組長」
1970年「血染の代紋」
「君が若者なら」
「トラ・トラ・トラ! 」
1971年「博徒外人部隊」
1972年「軍旗はためく下に」
「現代やくざ 人斬り与太」
「人斬り与太 狂犬三兄弟」
「日本暴力団 組長」より。鶴田浩二さん。
「人斬り与太 狂犬三兄弟」より。菅原文太さん。
1973~1980年「仁義なき戦い」(1973)
「仁義なき戦い 広島死闘篇」(1973)
「仁義なき戦い 代理戦争 」(1973)
「仁義なき戦い 頂上作戦」(1974年)
「仁義なき戦い 完結篇」(1974年)
「仁義なき戦い 総集篇」 (1980年)
1974~1976年「新仁義なき戦い」(1974年)
「新仁義なき戦い 組長の首」 (1975年)
「新仁義なき戦い 組長最後の日」(1976年)
「仁義なき戦い」より。菅原文太さん。
1975年「仁義の墓場」
「県警対組織暴力」
「資金源強奪」
1976年「暴走パニック 大激突」
「やくざの墓場 くちなしの花」
1977年「北陸代理戦争」
「ドーベルマン刑事」
1978年「柳生一族の陰謀」
「宇宙からのメッセージ」
「赤穂城断絶」
「県警対組織暴力」より。松方弘樹さんと菅原文太さん。
1980年「復活の日」
1981年「青春の門」
「魔界転生」
1982年「道頓堀川」
「蒲田行進曲」
1983年「人生劇場」
「里見八犬伝 」
1984年「上海バンスキング」
1986年「火宅の人」
「蒲田行進曲」より。(左から)風間杜夫さん、平田満さん、松坂慶子さん。
1987年「必殺4 恨みはらします 」
1988年「華の乱」
1992年「いつかギラギラする日」
1994年「忠臣蔵外伝 四谷怪談」
1999年「おもちゃ」
2000年「バトル・ロワイアル」
2001年「バトル・ロワイアル【特別篇】」
2003年「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌」
など、数多くの作品を制作されています。
「深作欣二の死因は前立腺ガン骨転移!葬儀ではブルーハーツ?」に続く